私が1時間、家を出遅れたせいで、ダンナを1時間待たせ、レストランの予約も1時間遅らせることになってしまった。
食べ放題のレストランはもうピークタイムを過ぎ、予約をしたにも関わらずガラガラであった。冷めかかった料理を食べながら、平謝りである。
予定は1時間ずれたが、時間に余裕はあった。
私たちは70分かけてしこたま食べまくり、今回も「食べ過ぎた」と言って店を後にする。
東急ハンズに向かいながら、「食べ過ぎは歩くと楽になるね」といつものセリフを言い合う。
これは本当だ。横になって寝るか、歩くかが、腹を楽にするのである。
なのでお腹は苦しかったが、だんだん楽になることを予感しつつ、買い物をする。
新しい手帳を買うと、今度は猛烈に喉が渇いていた。
食べる量が多いと、その分塩分の摂取量も多くなるからだろうか。食べ放題の後は喉が渇くものである。
ハンズの中にあった自販機でお茶を買い、ベンチで飲む。ダンナ、眠そう。私もやがて眠くなるだろう。
しかしそれどころではなかった。
お茶を飲んだらお腹がさらに膨らんでしまい、苦しいほど痛くなってしまったのである。
「食べ過ぎてお腹が痛い」という経験をする人は、いったい世の中にどれくらいいるのだろうか。
経験のない人にはイメージしにくいと思うが、痛いのは腹だけではない。背中や胸のほうまで、思いもよらぬところが部分的に痛んだりするのである。
そして、心臓のあたりが締め付けられるような感覚があった。怖い。食べ過ぎて血圧がどうにかなって、心臓が悲鳴を上げているのだろうか。もし私が倒れたら、食べ過ぎのことは伏せて、ポールのライブで興奮して、ということにしてくれる事を願った。
早稲田に向かう。次はお墓参りだ。
まずは山手線でふた駅。
たったのふた駅なのに二人で爆睡し、乗り過ごすところであった。ギリギリで走って飛び降りる。
腹痛は相変わらずで、階段の上り下りはもちろん、もう生きているだけで辛い。
ここに眠気も加わって、楽しいはずの休日はかなり厳しい状態になってきたのだ。
お墓参りを済ますと、霊園の控え室で寝てしまった。
人の気配で目が覚めたので、慌てて控え室を出る。
次の予定はポールのライブだが、まだ2時間近く時間があった。
とりあえず後楽園に向かうが、早稲田から飯田橋まではふた駅、乗り換えた飯田橋から後楽園まではひと駅、と寝るに寝れない微妙な距離が呪わしい。
後楽園で降りたら、もう漫画喫茶で徹底的に寝ることにする。ところが漫画喫茶が見つからない。
疲れ果てていたので、たまたま目に付いたファミレスに入ってしまったのだ。
「喉が渇いた。サワーをゴキュゴキュ飲みたい。」
「えっ!?お腹痛いんでしょ!?そんなん飲んで大丈夫??」
「もうずいぶん良くなった。喉が渇いた。」
「この後ポールだよ!?まだ2時間近くあるけど大丈夫!?」
私の酒癖を良く知っているダンナは、ここで飲み過ぎることを心配しているようだ。
「大丈夫、大丈夫、ちょっと酔ったぐらいが5割増しの感動を与えるんだってEE:AE5BE」
こうして扉は開くのであった・・・。
そして1時間。ワインが1本空いた。
私達は普通にいつものように飲んでおり、「いつかライブでやりたい曲」について盛り上がっていた。
酔っているので発想は果てしなく、それを具体化しようと無茶をして、無駄な時間を過ごしていた。
「ちょっと、もう、これからポールのライブだよ!?ジプシーキングスとか言ってる場合じゃないでしょ!!」時々ダンナが軌道を修正する。
「じゃあビートルズやろう、後期。誰かが『ビートルズの後期やろう』って言ったときに、『いや、あれはEぽ子がやってるから二番煎じになっちゃうよ』っていわれるぐらいやろう!」
「オレ、ABBYROADやりたいEE:AE5B1」
「私の出番がないよEE:AE482ヘルタースケルター歌いたい!」
いいですか?この会話、良く覚えておいてくださいね、明後日のテストならぬ、明後日の記事にまた出てきますからね。
「歌じゃなくてもいい!じゃあバックインザUSSRのピアノやる!!」
いいですか?これも明後日出ますからね??とても重要なセンテンスですよ。
こんな感じでいつもの久米川の夜のような時間が過ぎ、開演時間が近づいてくる。
「ああ、緊張してきた。オレ、前回、向こうでビール飲んだら途中でトイレ行きたくなっちゃって大変だったんだよなぁ。」空いたグラスを眺めるダンナ。・・・トイレ、行っておこう。
東京ドームに向かいつつ、私はトイレで思いついた質問をダンナにしてみた。
「開演前にトイレに行った時に人が倒れてて、スタッフを呼ぼうにも『大丈夫です、大丈夫です』みたいな感じで、でも全然大丈夫じゃなくて、身動き取れない泥沼状態になったらどうする??」
「・・・・・・・・・・悪いけど、『頑張ってください』、以上だ。今日だけは。」
「えっ!?じゃあ目の前で子供が、」
「『ごめんなさい』。」
「お腹の大きな妊婦さんが、」
「『じゃ!』。」
「じゃあ、会場の前にいる人にチケット10万で売ってくれって言われたら??」
「絶対売らない。」
「150万だったら??」
「ひゃっEE:AEB2Fイヤ、売らない、絶対に売らない。」
だったら私は150万で売るから、ひとりで行って来てね、そのお金で海外旅行しよう、などと軽口を叩いているうちに、ついにドームに着いた。
一度席に着くと、今度はビールが飲みたくなったのだ。
ダンナは前回の苦い思いがあるからか最初はいらない、と言ったが、時計を見て、「やっぱ飲む。俺のも。」と言ってお金をよこしたのだった。
ライブの話は明日にするが、これは書いておく。
3曲目あたりでダンナは突然、「もうダメだっ!!」と言い残してトイレに走り去った。
ちょっと責任を感じる。
そして、ライブ後に思ったこと。
仮にもう1日分のチケットがあったとしたら、どんなにお金を積まれても絶対に売らないだろう。
素晴らしいライブであった。
そのお話は、明日。