タイトルからして軽い小説だろうと思ったのだ。
果たしてその通り、マンガのように読みやすいものだったが、結構内容が深かった。
自殺をしたために天国に行けなかった4人。
受験の失敗を苦に死んだ裕一。
何となく死んでしまった美晴。
ヤクザの八木。
気の弱いサラリーマンだった市川。
時間の止まった空間に永遠に放り出される運命だったが、神がチャンスをくれたのだ。
49日間に、100人の自殺志願者の命を救うこと。
何の説明もなく現代の新宿に放り出された4人。
彼らはチャンスを生かすのか??
もう「フィクション」というよりも「マンガ」だが、実はそんなコミカルなあらすじの中に、鬱病、借金苦などの問題を掘り下げて盛り込んであるのだ。
実にさまざまな「死にたい人」が出てくるが、彼らは自分の状態を客観視できないということが分かる。
普通の人間は死にたくなどならないものなのである。
病んでいるから考え方が後ろ向きにしかなれないだけで、正面から原因を乗り除いていけば、生きていけるのである。
それを助けるのが、裕一たちの仕事だ。
そして、「自殺した自分」と向き合うことになる。
正しい現実を受け止めるラスト、残された家族の再生、感動であった。
救助対象者の難易度はどんどん上がり、手に汗握る場面も多い。
そんな中にも思わず笑ってしまうやりとりがあったりして、最後まで楽しませてもらった。
うん、すごく面白かった。
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「幽霊人命救助隊」 高野和明
文春文庫