人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

幽霊人命救助隊 / 高野和明

タイトルからして軽い小説だろうと思ったのだ。

果たしてその通り、マンガのように読みやすいものだったが、結構内容が深かった。

自殺をしたために天国に行けなかった4人。

受験の失敗を苦に死んだ裕一。

何となく死んでしまった美晴。

ヤクザの八木。

気の弱いサラリーマンだった市川。

時間の止まった空間に永遠に放り出される運命だったが、神がチャンスをくれたのだ。

49日間に、100人の自殺志願者の命を救うこと。

何の説明もなく現代の新宿に放り出された4人。

彼らはチャンスを生かすのか??

もう「フィクション」というよりも「マンガ」だが、実はそんなコミカルなあらすじの中に、鬱病、借金苦などの問題を掘り下げて盛り込んであるのだ。

実にさまざまな「死にたい人」が出てくるが、彼らは自分の状態を客観視できないということが分かる。

普通の人間は死にたくなどならないものなのである。

病んでいるから考え方が後ろ向きにしかなれないだけで、正面から原因を乗り除いていけば、生きていけるのである。

それを助けるのが、裕一たちの仕事だ。

そして、「自殺した自分」と向き合うことになる。

正しい現実を受け止めるラスト、残された家族の再生、感動であった。

救助対象者の難易度はどんどん上がり、手に汗握る場面も多い。

そんな中にも思わず笑ってしまうやりとりがあったりして、最後まで楽しませてもらった。

うん、すごく面白かった。

ぽ子のオススメ度 ★★★★★

「幽霊人命救助隊」 高野和明

文春文庫