ものの15分であった。
五線紙には8小節分の音符が適当に書き込まれただけである。
昨夜のことだ。
このまま頭の中で考えているだけでは練習にならない、形にしなくては、と、いよいよ鍵盤に向き合ったのである。
スタジオ練習日は4日後に迫っていた。
なに、1曲だ。しかも、良く知ってる曲じゃないか。
それまで私は「練習」と称して、その曲は何度も繰り返し聴いていた。
どの部分でどのような音が入るのかは頭に入っている。
しかし覚えられないし、そもそも一度も弾いていないのだ。
楽譜に起こして、弾けるようにしなくてはならない。
ということで、耳コピである。
CDはないので、音源をどうにかして音楽室に持っていかなくてはならない。
インターネットのお陰でその辺は便利になったが、こういう場合に音源を落としているのは、「ベーストレーナー」、以前私が「ベースを練習するから買ってちょうだい」「これさえあれば、ベースの練習が楽になる」と言って訪問販売か新興宗教の勧誘のようにしつこくしつこく言って買ってもらった機械である。
それも今や、ただのMP3と化していた。
そしてそれを8小節分聴いたらもう嫌になってしまい、ネットでバンド譜を検索。
古い曲だ。ない。
観念した。
観念して、次の日に延ばしたのであった。
そして次の日は、ちゃんとやってくる。
もうどうにも逃げられないように、今日はスケジュールに1時間、組み込んでおいた。
それにしても、つくづく根性も集中力もない人間である。
1小節聴き取ってはため息、立ち上がって無駄にウロウロ。
そんなことしている分だけ時間がかかるのだが、思うようにいかないのでじっとしていられないのである。
小学校の担任がこんな時、「お尻がかゆいのですか?」などと言っていたっけ。
こう言うのもなんだが、私は音を拾うのは得意である。ただし単音。
バンド全体でいろんな音を出しているが、一度にひとつしか聴き取れないのである。これを「得意」と言っていいのかは分からないが。
なので、和音になると、手間が2倍、3倍となる。
何度も何度も戻して聴いて、1つずつ音を拾うのである。
尻もかゆくなるわ。
そして、音符を書くのも苦手だ。
八分音符をいくつ入れたからここの休符はいくつ、などという算数チックな展開がムチャクチャ苦痛で、辻褄の合わない楽譜になっている状態だ。
楽譜というより、「イメージ譜」である。
その上「きれいに書く」のも苦手で、自分で書いておきながら自分で読めないことも多々。
実は似たような話を何度か過去に書いている。
全然成長していないのだ。そして、成長する見込みもない。
しかし、終わりは来た。
何とか曲がりなりにも仕上げることができたが、まだ先がある。
黒鍵の音符に赤丸をつけて出来上がりだ。
子供も初心者もやらないようなズルである。
今度はこれを見ながら練習しなくてはならないが、とりあえず一番つらい部分は終わった。
音は私が拾ってやっているのだ、これを譜面にする機械はないものかと毎度思う。
いっそ、耳コピごとやれる機械はないのか。
という愚痴で終わるところだったのだが、調べてみたら「耳コピソフト」というものが存在した(笑)
他に「バンドプロデューサー」、「採譜の達人」などというものもあったが、それを駆使する技術がない。
そもそも私の求めるものなのかどうかも分からないが、やはり一番早くて安くて使い勝手がいいのはウチのダンナである。
ダンナが私の言った通りに書いてくれればいいのである(笑)
書いてくれないかなぁ~~。