人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

夏休みのロッケバンド

「やっべ、プーチンがイケメンに見えてきた!!」

夜のニュースを見ながら、娘ぶー子はイスにふんぞり返っている。

夏休みである。

相変わらず昼までタップリ寝て、夜は元気だ。

「ハゲとイケメンのはざま、っつーか(笑)」

能天気である。

確かぶー子は文化祭のバンドを掛け持ちしてしまい、大変な事になっていたはずだ。

期末試験中に練習が入ったとか何とか言って、初心者のぶー子はキレていたのだ。

あの時は見かねて手助けをしたが、なぜこんなにのんびりしているのだろう?

確か、譜面がないから音を拾って欲しいと言ってた曲がもう1曲あったはずだが。

しかし、やはり。

「今日中に3曲!!今夜は徹夜だ(泣)」と言い出したのは昨日の夜だ。

熱があって具合が悪いと言っていたが、もう自業自得である。

眠気覚ましの薬を飲んで部屋にこもったぶー子をそのままにして、私は酒を飲んで寝たのであった。

朝起きてみると、本当に徹夜したらしいぶー子が起きてウロウロしていた。

朝ご飯を食べると少しだけ寝て、その後はボンボンとベースの音が聞こえてきたのでどうやら本気で練習しているようだ。

しかし、しばらくするとリビングに下りて来て、「タダで楽譜見れるサイトはないか」と騒ぎ出した。

やはりあの1曲が残っていたのだ。

楽譜がないから耳コピしてくれと言っていた曲が。

しばらくパソコンにはりついて検索していたが、そんな都合の良いサイトなどない。

あっても前日まで練習しないようなグータラ娘には見つけられないようになっているのだッ。

「おかーさん!!もう時間がないから、お金払って買っていい??あったんだけど、あの曲。」

しょうがないねぇ、後で金払ってよ。

ガガガーッ、ガガガーッと印刷する音が響く。

「うおっ、すげー勢いだよこれ!!入るのも出てくるのも!!」

紙を出し入れする度に盛り上がっている。

楽譜を手に入れて、もう余裕こき始めているぶー子である。

「ほいじゃ。」と言って、印刷したばかりの紙を手に、ぶー子は音楽室に再び戻って行った。

昼には練習に集まると言っていたが、大丈夫だろうか。

ところが携帯を持ってリビングに下りて来るまで、30分も経たなかった。

「どうした??」と聞くと、

「あー、もうここまでやれば適当に何とかなるっしょ。」そう言って昼ご飯を食べ出した。

「いやぁ、土壇場で出す力がハンパないんだって、アタシは。」

違う。

土壇場にならないと力を出さないのだ、アンタは。

しかもその力はMAXではなく、ほどほどである。

しかし私もバンドをやっていたが、実はそっくりであった。

練習に取り掛かるのはぶー子より全然早いが、何となく弾けてしまうと満足してしまい、結局中途半端な状態のまま本番になってしまうのだ。

そういえば楽譜代をもらってないぞ。

そんなところも私にそっくりであった。