人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子57歳。

金曜日、フレンチレストランで。

フレンチレストランで、ライブを聴きながら飲む・・・、という夢のような夜が叶ってしまった。

しかし最初に言うと、それは叶いやすい条件が揃っただけの事だが。

のスタッフ兼ピアニストのまゆちゃんが、漣に良く来るフランス人シェフ・エリックのお店でライブをやるというのだ。

まゆちゃんの「激烈グッドモーニング!」はぜひ観てみたかったし、エリックのフレンチも食べてみたかったのだ、一網打尽にするチャンスである。

ダンナなど会社を休んで床屋にまで行ってきた。

とても楽しみな夜だったのである・・・。

しかし席はもうほぼ予約で埋まっていたようで、私達が入店したのはオープンと同時の6時である。

貸し切り状態で料理をゆっくり食べ、まゆちゃんの演奏を聴き、モミー氏の歌を聴く。

贅沢な時間である。

1時間もすると席はもう満席に近い状態になり、ライブの方も盛り上がってきた。

美味しい料理にお酒、音楽。

酔いが回ってくるにつれ、何だかとても幸せな気持ちになってくる。

「幸せだなぁ~・・・。」このセリフが出るという事は、酒が回ってきた事を示す。

その時、店のドアが開いて、男性がふたり入って来た。

それが誰かと分かる前に私は、何だかとても懐かしいような、故郷に帰ったような、田舎のかあちゃん的な思いがよぎったのだが、果たしてそれは、スーさんと松井さんであった。

フレンチレンストランでまさかのスーさんの登場である。

さっきまで気取って幸せ気分に浸っていたが、途端にいつものテンションになってしまう。

スーさんもスーさんで、いつも通りあの飄々とした感じで勝手に私達の隣の予約席に座り、「すぐ帰るから。」とビールを注文した。

この時の事を振り返ると、ダンナも私と全く同じ思いであった。

「何だか懐かしくて、凄く安心した」。

スーさん達はすでに2軒回ってきたあとであり、もうゴキゲンであった。

久しぶりにスーさん節を聞いたが、相変わらずである。

「あのさぁ、イーちゃんさぁ、かぶとむしかぶとむし。」

「え?カブトムシ??」

「そうそうEE:AE595かぶとむしはどうなの??ムフフフ。」

ダンナはビートルズが好きなのでその方面の話かと思ったのだが、すぐに

「あ、間違えた、でんでん虫だ。でんでん虫ー。アハハハハ~♪」

で、でんでん虫。

その間違いもおかしかろうが、でんでん虫って音がもう可笑しくて爆笑だ。

で、スーさんが言いたかった事は「エスカルゴを食べませんか?」という事だった。

じゃあ皆で食べますか、と言うと「オレはいい。俺は食べない。」と真顔でキッパリ言った。なんじゃそりゃ。

そういえば、月イチでコンスタントに練習していた一中バンドだが、年が明けてから音沙汰がなかった。

ダンナが聞くと、「ん、冬の間はお休み。あったかくなったらやろうね。」と言った。

一中バンド、冬眠に入っていた・・・。

まぁこのところ色々重なっていたので助かるっちゃ助かるが。

軽い気持ちで「社長~~、なんかおごってくださいよぉ。」と言ったらスーさん、本当におごってくれた、4500円のワイン・・・。

何だか申し訳なかったです・・・、人のいい人間を酔わせて騙す詐欺みたい・・・。

ダンナはしきりに「老後の面倒はみます!」と言っていたが、「喪主は任せてください!」は聞こえていただろうか・・・。

スーさん達は松井さんのイケメン息子を呼び出し、嵐のように去っていった。テーブルに静寂が戻る。

しかし、心の静寂は戻らなかった。

すっかりダンナは酔い、「さっき言った事」も忘れる始末だ。

ということで、早めの帰宅となった。

お陰で私は二日酔い知らずだが、ダンナは完全にグロッキーである(笑)