人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

イケメンか否か

飲み疲れてグロッキーのところを無理に飲んだため、美味しくもなく酔いも回らないというつまらん酒になってしまった昨夜であった。

それはダンナも同じようで、12時を回るとグイッとカルピスを飲んで、サッサと寝てしまった。

つまらん夜なので私も寝れるなら寝たかったが、昼まで散々寝ていたので全く眠くない。

酒を飲んでしまったので薬は飲めない、ならば仕方がない、酔うまで飲んでやろうとダメもとでしぶとく飲んでいた。

何を飲んでもまずい。

何を飲んでも進まない。

酔いも回らないし、諦めて布団に入ろうと思った頃、娘ぶー子がずぶ濡れで帰ってきた。

非常に久しぶりである。

この連休は、ずっとすれ違いであった。

ぶー子は体を温めるためにすぐにシャワーを浴び、出てくると下着姿のまま、買ったばかりのバランスボールに座った。

ゆらゆらと揺れながらぶー子が言った。

「ねー、おかーさん。」

目を見ない。

「頼みごと」か「告白」であることを予感する。

「ん?」

こう言う時は、私もあまり目を見ないようにする。

言いやすくするための配慮であるが、早速気になって気になってガン見したいのが本音である。

「おかーさんってさ、おとーさんともう長い付き合いでしょ?」

何を言うか、今さら。付き合いもなにも、夫婦である。

どえらい面倒な手続きをしないと離れられない間柄なのである。

「そりゃまぁ、付き合いっていうか、夫婦やってますけどね、長い事。」

何か後ろめたい事がバレたかと焦ったが、考えても後ろめたい事は思い浮かばなかった。

「おかーさんさぁ・・・。今までイケメンとかに気持ちが動きそうになった事ある?

・・・あ?

何だそれは、つまり、「他の男に心を奪われたことはないのか」と聞きたいらしいが、なぜぶー子の中ではイケメンに限定されてしまうのだろうか。

つくづくイケメンorナッシングの子である。

ぶー子の質問に忠実に答えてイケメンに限定すれば、ハッキリ「NO」である。

私はイケメンは苦手だ。世界が違う。

たとえ一緒にご飯を食べたり酒を飲んだりしても、恋愛感情が芽生える事はほとんどないと言っていいだろう。

私は警戒しているのだ。イケメンが私と居て楽しいはずがないという、悲しい程のコンプレックス。

別にお前なんかと居たくないという強がり。

イケメンは女にチヤホヤされて性格が捻じ曲がっているという思い込み。

いずれにしろイケメンはくつろげないので苦手なのである。

ただし酔うとイケメンも何も見分けがつかなくなるので、気持ちは平等になる。

私を狙っているイケメンがいたら、まず酔わせることが攻略の第1歩だ。

こんな話をぶー子にしても仕方がないので、「他の男に心を奪われたことはないのか」という質問であった事にする。

非常に難しい質問である。

なぜなら隣の部屋で寝ているダンナのイビキが聞こえないのである。

正直に答えるのは危険だ。

いや問題は、「それは危険な答えなのか?」である。

非常に難しい質問である。

なぜならここに答えるのも危険だからであるEE:AEB64

ただ誤解のないように言うと、どれも過ぎ去ってしまえば下らない話で、上っ面だけで舞い上がっているちょっとしたゲームのような些細なものであった。

なので私は四捨五入して「ない」とぶー子に答えた。

つまらない答えである。使えない親だと思ったことだろう。

そこで私は占い師のようにぶー子に返した。

「で、誰かに心奪われていると。」

ぶー子は素直にウンと言って、「最初はこんなヤツと思ってたのに、昨日みんなで飲んだときに話したらすごくいい奴で・・・。」

昔の少女マンガ並みの展開である。私の返事よりもつまらん。

つまり、ぶー子が心奪われたのは昨日の今日である。

言い方を変えれば、そんなのはまだ、奪われきっていない。

ほんの一面だけ見て結果を早まるな、ぶー子よ。

奇跡的に今の彼氏はイケメンだが、それが奇跡である事を忘れてはいけない。

そしてぽ子よ、結婚できた事は奇跡である。それを忘れてはいけない。

少しばかり過去を思い出し、そんな気持ちになった。

もちろん、亭主がイケメンか否かは関係ない。