人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

はじめまして、サンタイザベル・ぽ子と申します。

「初めまして」

・・・という形で人と会うのが苦手である。

Pでだれ彼構わず絡んでいる姿を知っている人は意外に思うかもしれないが、あれは酒の力だ、というのももったいない、単なるヨッパライ現象である。

 

シラフとなると、かなり緊張する事になる。

自分に自信がないので「おかしな事を言ってないだろうか」「バカとか思われてるんだろうな」と勝手に深読みしてしまい、言葉のひとつひとつがネガティブな凶器となって突き刺さるのである。

酒で解放されるのは、その反動だろう。

 

 

さて、緊張している。

 

 

Pのスタッフのちーちゃんが「バンドやろう!」と声をかけてくれたのだが、これから他のメンバーと初顔合わせなのである。

 

そのふたりについての情報は、「ちーちゃんが声をかけてきたご夫婦」ということだけである。

しかし今私の緊張度は、かなり上がっているのだ。

直接的な情報はそれひとつだけだったが、ちーちゃんとのやりとりで分かった事は、

・鍵盤ハーモニカを頼んできた。

・そのアーティストが使っているものと同じ鍵ハモを持っている。

・ピアノがない曲でも適当にやるからOK。

・コーラスもやってくれる(自らの申し出)。

・メールに添付されていた曲は、ライブバージョンであった。

・夫婦で音楽をやっている。

 

・・・最後のはうちと同じだが、うちの場合は特別である。

「夫婦でバンドをやっている」というよりも、「Pで弾かせてもらったよ!」というレベルなのだ。

一中バンドにしても、飲んでるんだか弾いてるんだか境目がない。

大抵の人が「夫婦でバンドをやってるんだって」と聞いて抱くそれは、私達にではなく彼らのような人に使われるものである。

 

つまり私が彼らに抱いた印象は、「本格的に音楽と向き合い、朝ご飯に梅干などを食べる」という高いところにいる人種であるというものであった。

かなり自信はある。

多分最後に「サッポロ一番みそラーメン」を食べたのは、年単位で昔の話になるだろう。

 

何でもかんでも安請け合いするのは私の悪い癖だが、この頃は「やれる事はどんどんやってみたい」と思うようになり、後悔する事はあまりなくなった。

しかしだ。

人に迷惑をかけてはいけない。

ライブでチョ~上手いイントロが流れ、私が鍵盤ハーモニカを片手に中央に立ち、それを見て「なにあれ、凄い!」となったところで、プ~~♪とあり得ない音が鳴る。

でへへ、練習してないんでね、ゴメン、と歌いだしたら下手、こんな展開だと分かっていたら、彼らは一緒にやってくれないだろう。

ならばそうならないように努力しろ、って事だが、今日の時点ではまだほとんど努力が積み重なっていないのだ。

見た目と会話で判断されるだろう。

そのどちらにも、安心させられる要素がない・・・。

 

 

プロ級の彼ら(勝手に決定)のことだ、「ちょっと合わせてみよう」と言われないとは限らないので、今日はずっと曲を聴いていた。

知らなかった曲は1曲だけだったが、それでも覚えられないのである。

コンポの設定をリピートにして繰り返し聞き、歌詞をパソコンでつけっ放し、覚えやすいように対訳まで調べた。

印刷したかったのだがどうやらできないようになっているみたいで、仕方なくコピーして携帯に送る。

努力だ。

しかし下手ではしょうもない。

「狼と7匹の子ヤギ」で狼の声を美しくした薬が欲しい。

・・・と調べたらそれはなんと、「チョーク」であった。

やった~~!!それなら私でも手に入るぞ!!

・・・って、チョーク食べるかいな、狼にしても。

無責任な野郎だぜ、グリム。

 

 

そろそろ支度をしなければ。

あぁどうか彼らが私を一目で気に入ってくれますように。

ドキドキ。