「なに?」
「フーン。」
「こないだもそう言ったよね。」
「いつもいつもねぇ・・・。」
「だったらなんで・・・。」
ずっとその繰り返しである。
低い声で威圧しているのは娘ぶー子、ぶー子に威圧されているのは彼氏である。
バイトが終わったらすぐ来ると言ってたのが、ずいぶん待たされたらしく、ご立腹だ。
いやぁ、
怖いですね。
さすがぶー子、
私にソックリである。
クドい、要領を得ない、容赦ない。
彼に改善を求めているのではなく、怒りをブチまけているのだ。
彼は、明日何でもします、ジュース飲んでて遅くなって、などと言ったようで、それがまたさらにぶー子を怒らせる。
「くそー、こんなんだったら風呂に入れば良かった。明日の朝は早いから時間なかったのに・・・。」
ひとしきりブツクサ言って、ぶー子は翌朝のためにすぐに布団に向かったのだった。
ところでぶー子たちのケンカはその前日から始まっていて、謝ったり許したりして、このケンカは3回目になっていた。
ケンカをすると優勢なのは見ての通りぶー子のようなのだが、実は短気なのは彼氏の方らしく、いつも突然口をきいてくれなくなるところからそれは始まる。
付き合い始めの頃こそ、ぶー子はすがって謝ってと下手に出ていたのだが、最近は「もう絶対にこっちからは折れない」と放置するようになった。
すると大抵、ほとぼりが冷めたころに向こうが寄り添ってくるようになったのだ。
しかし今度は、ぶー子がだんだん調子に乗って来てるんじゃないかと心配になってきた。
昨日の2度目のケンカではバイト中に彼氏が突然怒り出したらしいのだが、例によって理由も分からないので、ぶー子は「放置」を通り越して怒りのオーラをにじみ出したらしい。
そこでビビッた彼氏が、人の見ていない所でぶー子のところにやってきて、「ねぇ。」「ねぇー。」とツンツン体をつつき回したようで、それがさらにぶー子の怒りの炎に油を注いだ。
「こんなツンツンとかしてきてさぁ、もう何!?ってEE:AE4E5意味わかんない、もうムカついたEE:AE4E5」
バイトから帰ってきてぶー子はその怒りを私達夫婦にぶつけてきたが、笑えなかった。
ぶー子が帰るほんの数時間前、私は怒っていた。
正確に言うと「イライラしていた」とかそんな感じの状態だったが、とにかくもう何にだか腹が立ってやるせなくて、プンスカプンスカ皿を洗っていたのだ。
そこへその様子を見て取ったダンナが「ぽー子EE:AEB80「おいEE:AEB80EE:AEB80」「こらEE:AEB80EE:AEB80」と、ツンツンちょっかいを出しに来たのだった。
同じじゃんかEE:AE4E6
あぁぶー子、ウチらとカブるから、それ以上言わないでEE:AEB30
残業が終わっていつものスーパーで惣菜を選んでいると、「あ!」と言って彼女はこっちを指差して、正面で立ち止まった。
ぶー子である。
不自然なほど足先を内股にして、テテテとすばやく手を振った。
どうやらゴキゲンである。
「何やってんの?どっか行くの?」
まぁ、犬も食わないのは老いも若きも同じである。
しかし、調子に乗ると痛い目に遭うということを経験で学んでいるのは、「老い」の方だ。
あの子達の行く末が、不安である。