娘ぶー子が来た。
歩いて数分の近所に住んでいるので、わざわざ来たという感覚ではない。用があったこともあるが、単に「来た」だけである。
こちらも特に準備なんかせず、普段通りの我が家に現れた。
「お、頑張ってるね。」
古本やゲームソフトの入ったダンボールを見て、ぶー子が言う。
バンバン見限って処分できる彼女には、捨てられない私がもどかしかったようである。
「うん、どうせもうすぐ死ぬと思ったら、とっておいても仕方がないと思うようになった。」
何となく勝手に、もうすぐ死ぬような気持になっているこの頃であったが、考えてみれば、誰だってもうすぐ死ぬのだ。1年後だって、10年後だって、ある意味もうすぐである。人生なんて、あっという間に終わってしまう。いつだって誰だって、もうすぐ死ぬのだ。そういう意味では、間違っていないだろう。
「え、お母さん、それなら、・・・・・・。」
ちょっと上ずったような声で、ぶー子が慌てたように被せて来た。
しまった、娘の前で死ぬとか言うのはまずかったか。そんな深刻な意味合いはなかったんだが。
ぶー子も今年で、29歳になる。
近所とはいえ別の世帯となり独り立ちはしているが、いきなり親の口から「もうすぐ死ぬ」などと聞かされても、受け入れがたいものだろう。
メンヘラ気質で、これまでも散々心配をかけてきた。
違うのだ、これはそういう言葉通りの意味ではなく、
「それなら早くPS4買ってもらいなEE:AEB30」
え?
「もうすぐ死んじゃうんでしょEE:AEB2Fだったらそんな古いどうでもいいゲームなんてやめなEE:AE482やりたいゲームやらないで死んでもいいのEE:AEB2F」
げ、ゲーム・・・。
確かにまぁ、・・・。
いやEE:AE482
「ちょっと待ってEE:AEB30そりゃPS4もやりたいけど、今やってるゲームだってどうでもいい訳じゃないんだってEE:AEB30どのソフトもやりたくて買って来たんだよEE:AEB30今やってる『アンチャーテッド』はね、シリーズの2なんだけど、凄く評判のいいゲームでね。シリーズで買ったのよ。この1の操作性がね、(以下略)」
この親にして、この子あり。
ぶー子も私も、何も心配はいらない。
PS4で遊ぶまでは、死なないぞ。