薬と夜更かしのコンボで寝つきは良かったが、目覚しをセットし忘れて寝坊してしまった。
朝になってダンナが食事を済ませてから着替えに寝室に入って来たが、「起きなくてよろしい」というような事をもうちょっと優しげに言ってくれたので、9時半まで寝ていた。
しかし何でもかんでも薬のせいにするのもアレだが、ボーッとして何もやる気にならない。
しかしこのところだらけグセがついてきたので、何かひとつでも心に残る家事をやっておく事にした。
「ひとつでいい」と自分に許可したので気が軽くなった。
だったらやってやる。ひとつだけだぜ。自分に念を押す。
冷蔵庫を片付けよう。
あんなに一杯入っていて、食べられるものは少ししかないのだ。
見るのが怖いもの、本当に忘れているもの、色々あるだろうが、そろそろ何とかしないとギュウパンである。注:牛のパンツではない。
今回も色々あったが、今さらもうそんなに珍しいものはない。
1本だけ残ったソーセージが3袋だとか、残り物のタッパーだとか。
なんだ、こんな程度かと肩透かしを食った。
ところで良く、腐乱死体は臭いがキツいという話を聞く。
長い間誰にも気付かれずに放置されていた死体が、悪臭を放ってきてやっと気付かれるとか。
その臭いたるや壮絶で、その場で吐く人が続出する程らしい。
しかし私は、そういう話を聞くにつけ思った。
吐くほどの悪臭って。
臭いで吐くなどあり得ない。
私はこうして半年に一度ぐらい気まぐれに冷蔵庫の掃除をするが、腐ったものだらけである。
原型を留めず正体不明になった物、フタを開けたら煙が出たもの、色々あったが、もちろん臭い。
相当に臭いが、吐いた事はない。
鍛えられてしまったのだろうか。
鼻には自信がある。
しかしだ。
吐くかと思った。
辛うじて「おえ~~~っ!!」と声にする事で押し留めた。
しかし続いて第二波、第三波と容赦なくやってくる。
たまらず換気扇を回して逃げ出したが、これでは戻れない。
戻って始末しないと、いつまでたっても臭いは消えないだろう。
ウッ、ウッとこみ上げながら、何とか始末したそれは、賞味期限の切れ果てた生ガキであった。
この生ガキは丈夫なビニールの袋に密封されていたが、冷蔵庫から出したときにはパンパンに膨らんでいた。
これがもし冷蔵庫で破裂していたら、未曾有の大惨事となっていた事だろう。
カキはあり得ないほどの悪臭を放ちながらドロドロに溶けていたのだ。
生ガキの腐臭、これが私の中の悪臭ワースト1となった。
ただのワースト1ではない。
ダントツ、神がかり的なワースト1である。
となると、もしかしたらまだまだ世の中には臭いものがあるのかもしれない、人間の死体も含めて。
己の浅さを思い知ったぽ子であった。
私なんてまだまだである。