人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

テディベアの失踪

テディベアが消えていた。

ちょっと前の話だが、寝室に飾ってあったテディベアがいなくなっていた。

小ぶりの茶色いフワフワのクマだ。

タンスの上に座らせ、膝のうえにヒヨコの小さなぬいぐるみを抱かせていた。

あれ?

アヒルか??

黄色くてよくわからん。

それが、気がついたらいなくなっていたのだ。ヒヨコを残して。アヒル?

最初は「落ちたかな?」と思ったが、どこにも見当たらない。

しかし、膝に乗っていたヒヨコは残っていたのだ。アヒル?

落ちるなら一緒に落ちていいはずだが。

簡単に探したが、なくて困るものではない。

そのうち出てくるだろうと気にも留めずにいた。

そして忘れた。

ある朝のことだ。

「エルがね、可愛かったんだ♪」

寝室に着替えに行って戻ったダンナが話し出す。

「今一緒に寝室に行ったんだけどね、おうちあるでしょ?」

おうちというのはペット用の小さな柔らかいハウスだ。ぬいぐるみのような素材で出来ている。

「あそこにクマがいるでしょ?それに向かってエルが威嚇・・・。」

クマがいるでしょ?

サラッと当たり前のようにダンナは言ったが、はあ?私は知らない。

つーか、テディベア、そんなところにいたのか。

「ええっ?!ちょっと待って、何でそんな所にクマが・・・。」

「知らないよ、でエルが、・・・。」

ダンナが話したいのはクマの事ではない。エルの事なのだ。

私に話を遮られて、ちょっと戸惑っている。

しかし何でそんなところにクマがいたのか分からないと、「ホント、エルかわいい♪」という気持ちにはなれない。

「そのクマ、探してたんだけど。」

今度はキッチリと話を遮り、そこで止めた。

「膝に乗ってたヒヨコは残ってたのに。」アヒルだったらすまない。

「え~?さあ何でか俺にはわかんないけど・・・。とにかくエルがおうちに頭突っ込んで威嚇してたから中を見てみたら、クマがいたんだよ。」

誰がクマを?

私じゃなくてダンナじゃない。

だったら・・・。

娘ぶー子でもないことがすぐに分かった。

想像だが、多分間違いないだろう。

ちょっと前に、ラと寝た晩があった。

鳴いたりして落ち着かないのでこの頃あまり一緒に寝てないのだが、深酒をした日だったので爆睡できるだろうと思って連れて行ったのだ。

寝てしまえばこっちのものだ。

ラよ、好きなだけ鳴いて遊びまわるが良い。

で、予定通り爆睡したのだが、あの時だろう。

ラはフワフワしたものが大好きで、そういった物を見つけると口にくわえて「ワオ~~ン」「ワオ~~ン」と鳴きながら見せに来る。

その姿が誇らしげで微笑ましいのだが、時々思いも寄らないものがなくなったりするのが困りものだ。

何でクマをハウスに連れて行ったのかはわからないが、恐らく犯人はラだろう。

そして、突然ハウスの住民となったクマを見て、エルはビビッたのだろう。

ラはラ、エルにはエルの物語があるのだ。

昨日も飲んだのでまたラを連れて寝たのだが、あまりに鳴くのでリビングに戻した。

朝になってみると、ハウスに入っていたはずのクマが床に放り出されていた。

恐らく昨夜はこれをくわえて、「ほら、クマだよ!!」と自慢していたのだろう。

寝不足である。