「6回は通ってもらうようになりますね~。」と言われていたので、その続きだ。
5時半に着くと、ちょうど小さな女の子も診てもらうところだった。
「ぽ子さんもどうぞ。」
診察台は2つあるので、私も通された。
「あ、あの、今日は痛いでしょうか?」
隣に小さな子がいるのに恥ずかしかったが、どうしても気になったので聞いた。
「今日はー・・・、もしかしたらちょっと痛いかもしれないけど、もうそんなに痛いことはないはずですよ~。」
どっちなんだ。何が起こるのだ。
治療をするにはまず仮歯を取らなくてはならない。
「取れやすいから気をつけて。」と言われていたが、だからと言ってちょっと小突いて取れるほどヤワではないはずだ。
どうやって取るんだろう?実はそれが一番気になっていた。
接着しているところを、ところを・・・、ところを・・・?
「じゃ、取るからちょっと我慢してね。大丈夫だから。」
え?我慢?大丈夫?
怖くて目を閉じていたから何を持っていたのかはわからないが、何かで仮歯をガンガン叩き始めた。
ちょっ・・・取るって・・・。ガンガン凄い力で叩いている。
痛くはないが、歯じゅうに響いている。なにより怖い。どうなってしまうのだ?
しばらくガンガン叩いていたが、そのうちポロッと取れた。ホッ。怖かった。
38年生きてきて、このように歯を叩かれたことなどない。恐ろしい体験であった。
「じゃ、ちょっと削りますね。もう神経は取ってあるから痛くないから。」
そんな言葉で安心させようったって、そうはいかない。私は疑り深いのだ。
昨日の朝も、ドアを開けずにセールスを撃退した。我ながら見事であった。
ヴィ~ン・・と機械が唸ると前回の恐怖が甦る。痛くなくとも顔が歪んでしまう。
その時。
「いたそうだねえ~。」と思いがけず、女の子の声がした。さっき一緒に入った子だ。
しまった、この情けない姿を見られたか。
「ちゃんと座ってなさい!」と怒られていたが、もう遅い。
私は大人のくせに今日は痛いかと聞き、痛くもないのにビビり上がって顔が獅子舞なのだ。
しっかりしなくては・・・。
ところが、「ちょっと痛いかもしれないけど、今日だけだから。今日が一番痛いんだけど、我慢してね。」と言われ、
えっ?と思っていると痛みが走った。一瞬だ。
歯の奥のまではめ込んでいたネジを引っこ抜いた、とう言う感じか。
「ごめんね~。」間髪入れずにもう1回。
痛かった。痛かったが一瞬だった。良かった、もう痛いのは終わりだ。
ところが今度はこの取ったところにまた何かを入れるらしい。
これも痛かった。
1個は痛くて入らず、小さいのにしてもらった。
後ろで助手の奥さんと話しているのが聞こえてしまったのだが、
「どうします・・・?」
「Eが・・・神経がもう死んでれば痛くないんだけどな・・・。」
「麻酔は・・・。」
「とりあえずなしで、痛がったら麻酔しよう。」
ええっ!!イヤだ、麻酔して下さい!!痛くなくても麻酔して下さい!!
・・・と思ったらそれは隣の子供の話だった。良かった、良かった。
あとはまた仮歯をつけて終わった。
「じゃ、ちょっとこれを噛んで・・・待ってて下さい。」
そう言ってガーゼを噛ませると、隣の子供の治療に行った。
麻酔なしで大丈夫なのか??他人ごとながら心配だ。
私だったら絶対にイヤだが。
ところが子供は最後までおとなしくしていて、褒められていた。
すごい。私よりすごい。
しかし、その子の治療が終わるまでずっとガーゼを噛んでいたので、ガーゼがヨダレでデロデロになってしまった。
心の中で何度も呼んだのだが。
また来週に続きだ。きっとまた歯をガンガン殴ることろから始まるのだろう。
気が重いが、歯医者の通院とラーメンがセットになりつつある。
悪くないな。
ところで余談だが、隣の女の子は小学校の1年生だという事で「ちゃんと大人しくて偉かったですよね~。」と言ったら
「それが、最初は大変だったんですよ。」と話してくれたのだが
ここに来るまではどこの病院でも泣いて騒いで治療をさせなかったらしいのだ。
ここでもそうだったらしいのだが、もう今治さないとどうしようもない歯が4本もあったらしく、
脅したりなだめたりして9時までかかってなんとか治したらしい。
へぇ~。そりゃビックリだ。
さっきは褒めたが、やっぱぽ子の方がエラい、いい子だ。
あの頃、私は麻酔なしで耐えたのだ。
だからそれがトラウマになっているのだが。
しかし、現時点では負けか(笑)