人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

悪夢の再来

1年間通った歯医者から、ハガキが届いた。

あれから半年が経った。

そろそろメンテナンスに来いと言う事だ。

そんな物をもらうまでもなく、予約をしようと思っていたところだ。

痛いんだよ、コンチクショー!!(泣)

思えばずっと痛かった。

ずっとずっと痛かった。

右の上の奥歯である。

ところで私は、ハガキをくれた歯医者で、右上の親知らずを抜いている。

当然抜いてしばらくは痛く、歯を磨く際にも細心の注意を払っていた。

生えていた物を、人間の力で無理矢理抜いたのだ。根元から。

長い間、痛んでいた。

私はこのポイントを刺激しないように、右奥はそっと磨くのが習慣になっていった。

その習慣はいつからか、「適当に磨く」に変わっていた。

ところがある日、細い歯ブラシで右奥をコチョコチョ磨いてみたら、激しい痛みが走った。

神経に障る痛みだ。

これは明らかに抜歯の影響ではない。

いつから痛みが変化していたのだ?

痛いが、痛む場所をハッキリさせたかったので、私はその細いブラシで奥歯を1本1本こすってみた。

ハンパねーぞ、奥から2番目の根元。

「メンテナンスですか?」

電話で苗字を言っただけで、クスッと笑われた。

あの悪夢のような1年が蘇る。

痛みに極端に弱いぽ子は、「この歯医者開業以来最高のビビリ」の称号をもらったのだ。

メンテだけではない、緊急事態だ、歯が痛い、と告げると、一番近い金曜に予約を入れてくれた。

それが今日である。

ところで昨日はやはり飲み過ぎて、仕事がつらかった。

寝る前にウコンドリンクと、また痛んでもいない頭のためにナロンエースを飲んだが、一応効果はあったようには思う。

それを差し引いてもこの二日酔いだったのだ。

飲み過ぎた。

「先生、どうなってるんですか!?」

レントゲンの写真を見て戻って来た先生に、食らいつくように聞く。

先生は、「う~~~ん、なんか変な銀歯が詰まってるね。」とだけ、ボソッと言った。

変な銀歯??

恐らく子供の頃に詰めた銀歯だが、歯医者が詰めたのだ。ウチのダンナが詰めた訳ではない。

それが「変な銀歯」って・・・。

まぁつまり、古い素材が変質していて、その下が虫歯になっていると。

「変な銀歯」という説明が必要だったのかは疑問だ。

「じゃ、ちょっと見せてね。」

イスが倒される。

私は幼児以下のビビリなので、先生もこのように幼児向けに声をかけてくれる。

口をあけると先生は、何か器具を持って口の中に入れた。

何だかはわからないがこれはきっと、

・水が出るか、

・風が出るか、

・いじられるか、

・削られる、

・・・のであろう。

GOD、そのどれも、かなり痛いのは明らかである。

「ちょっと待・・・。」シュー。

風であった(泣)ひどい事を。

「イタイイタイイタイ!!(泣)」私は思わず足をバタバタさせた。

「これはそうとう神経参ってるね~。」先生はケロッとして言う。

だから何度も言ったじゃないか、触るだけでも相当痛いと。

こんな目に合いたくないから繰り返したのに。

「神経、取るようだね。」

神経、取る。つまり、あの1年間の悪夢をまた繰り返さなくてはならないのか。

「またあれを1年やるんですか!!」思わず体を起こすと、「だから普通は1ヶ月で終わるんですよ。」と奥さんであり、助手でもある美人の彼女がケラケラ笑った。

確かに痛い痛いと騒いで治療を先に進ませなかったのは私だが、痛くないものを痛いといった訳ではない。

ハンパじゃなく痛かったのだ。

「今日は麻酔をするから、痛くないはずだよ。」私は麻酔の痛みは平気である。

じゃあ痛くならないようにジャンジャン打って下さい。

あぁまたこんなお願いをする日がこんなに早く来るとは。

「痛かったら左手を上げてくださいね。」

「痛いこともあるんですかッ!!」

「そりゃ、やってみないとわかんないよ。」もう呆れている。

しかし、ウィーンウィーンと削り始め、数秒もすると痛くなってきた。

「痛い」と言い切るほどではないが、痛くなかったものが痛んできたのだ。

しかもまだほんの序盤。

このままではもっと痛くなる。

「うあ!!」と言って左手を上げた。

「!?え?もう痛い!?」先生は驚いて手を止めた。

「あ・・・、痛そう・・・です・・・。」正直にそう言うと、「痛くなってから手を上げてね!!」と注意される。当たり前だ。

しかし再開してもほの痛い。

そいつは少しずつ近づいて来る。

痛いよ、きっと。このままじゃ痛いよ。

私はゆっくり左手を持ち上げる。

助手の奥さんは先生に、「どの辺から『上がった』とみなしたらいいですか?」と爆笑しながら聞いている。

もうダメだ、怖い、絶対に痛くなるよこれは!!

私は思い切って「う~~!!」と言って左手をさらに大きく上げた。

「やっぱり痛いか?」

「ハイ、もう痛いです!!」嘘でも何でもいい。自分を守れるのは自分しかいない。

かくして麻酔を追加となった。

しかし正解だった。

今度は全く痛くならなかった。

しかし、麻酔を多く打ったために、口の右半分がヘロヘロである。

この後にカレー(今年はラーメンではない。カレーイヤーと決めたのだ)が控えていたので不安である。

次回は来週だ。

歯医者の後の食べ歩きの方を楽しみに、今回の治療も頑張っていこうと思う。