人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

寝かしてくれ・・・

「もう随分酒飲んでないな・・・。」ダンナが言った。

本当だ。

ダンナは先週の金曜、子猫を拾った日にビールをジョッキに1杯と缶ビールを1本飲んだのが最後だ。

一方私は「元気」が死んだ時のヤケ酒と、

あまりに眠れないので眠剤のまわりを良くするために飲んだコップ1杯のワインだけだ。良い子はマネしないように。

そこで、明日は休みだから交代で寝ることにして、お互い寝る前にひとりでギュッと飲もうということになった。

では夜中は私が起きるので、12時まで寝かせてもらおう・・・とベッドに入ったのは9時。

もの凄く眠かったのでいい加減寝れるかと思いきや、ちょっと寝たと思ったらすぐ目が覚めてしまった。

こうなるとなかなか眠れない。

いつも酒の力を借りて寝ていたので、うまく眠れないのだ。

焦るな・・・焦るな・・・。

子猫の事を考えると眠れなくなるぞ。何かないか?

そこそこ夢中になれて、そこそこバカバカしい事。

そこで私は、子猫を捨てた奴を見つけたらどうしてくれようか、考えることにした。

最初はブン殴った。

・・・平凡だな。

これは空想なのだ。もうちょっと欲をかいてもいいだろう。

「火をつけてやるから住所を言え。」・・・言う訳ないか。

「土下座して死んだ子猫と母猫に謝れ。」・・・気が済まない。

「これから毎日死ぬまで子猫に祈れ。」・・・!!コレいい!!

でもホントに毎日祈るかなぁ。

なにかキツい脅しをかけないと。

「1日でもサボッたら火ぃつけるぞ!」・・・くそ、火しか思いつかない。

サボッた事がわからないとしょうがないじゃないか。

どうしたらビビッて毎日祈るだろう?

考えた。

考えてる間に寝れればいいと思っていたが寝れなかった。

寝れなかったので考えついてしまった。

私の考えた最高の脅しは

「黒魔術をかけてやる・・・。」

であった。どうだ、怖いだろう。

私だったら毎日祈るぞ。

こうして結局寝たか寝ないかわからないうちに12時になった。

リビングに下りてみると、ダンナがイスで寝ていた。

あーあー、せっかくの飲むチャンスなのに、コップのビールはほとんど残っている。

疲れていたのだろう。

もう布団に入ったらと声を掛けたが

「最後の・・・ミルク・・・見たい・・・。」とか細い声で言った。

泣ける話じゃないか。

本当に起きてきたが、結局横で白目をむいて座っていたので

一度子猫を抱かせてから寝るように言った。

さて、これから朝まで徹夜だ。

念願のゲーム三昧のチャンスだ。

さっさとこのミルクを終わらせてしまおう。

ところが今回に限ってなかなか子猫が寝ない。

手からおろして子猫ハウスに戻すと、あちこち動き回って寝ないのだ。

しょうがない奴だ。そんなに手の中がいいか。そんなに私が好きか。

手で包んでやるとおとなしくなった。

フフン、かわいい奴め。しょうがない、ゲームはちょっと遅らせてやろう。

子猫の体がポカポカ温かくなってきた。

冷えてたのかな?やっぱり手だと温まるんだな・・・。

・・・違った・・・。

手からボトボトとおしっこが溢れてきた。

おもらしかよ・・・。

体を拭いてやって、私も濡れたシャツを着替えて

まだ起きて歩き回っている子猫を手に持つ。

やはりおとなしくなる。

かわいい奴め。おしっこの事は忘れてやろう。

・・・。

え・・・?

なんか変・・・。

苦しそう・・・。

ウーン、ウーン、と苦しそうに力んでいる。

「子猫は1時間であっという間に容態が急変しますから。」

先生の言葉が甦る。

どうしよう、どうしよう、電話、病院に電話だ。

そこでもう一度子猫を見ると、おしりにウンチが・・・。

ハァーッ。もういい加減ゲームやるぞ。

ところが・・・。

やっと寝た子猫は、寝ながら体をピクピク痙攣させている。

そういえば呼吸も荒いような・・・。

PCの前に走って行き、

「子猫 痙攣」

「子猫 呼吸数」

「子猫 ピクピク」

を検索、その間も何度も子猫を見に行く。

検索はそのうち、

「動物病院 緊急」

「動物 電話相談」

の方に方向を変え、

最終的には本当に電話した。

電話に出た人は良くわからないのか「はぁ・・・。そうですね・・・。そういうこともあるかもしれないですが・・・。」と煮え切らない。

ダメだコイツ。

くそー、朝の病院まで待つのか。

その後も何度も子猫を見に行く。

変化はない。

ないが・・・。

・・・良く寝ている・・・。

あくびまでしている。

いつも・・・こんな感じ・・・だったっけ・・・?

何だかわかんなくなってきた。

そう言えば電話の煮え切らない女も

「子猫だと呼吸が速いこともあるかも・・・。」

「寝てるとピクピクすることもあるかも・・・。」とか言ってたな。

「あるかも」とか言うからピンとこないじゃないか。

結論。

子猫は良く寝ている。

時計を見たら4時であった。