「深夜特急」を夢中になって読んだのは、もう何十年前の事か。
今回もノンフィクションだが、自身の事ではなく、登山家・山野井泰史の壮絶なアタックの記録になる。
山野井は、「無酸素・ソロでのアルパインスタイル」にこだわるクライマーだが、もう標高であるとか、それによる名誉であるとかいうものにはこだわりはなくなっていた。
そんな中で、一体自分が求める山は何なのか。漠然ともがいていた時、スッと入ってきたのがヒマラヤ山脈にある「ギャチュンカン」だったのである。
標高がわずかに8千メートルに届かないためか、知名度も低く、あまり登られていない山だ。
しかしその切り立った崖は、山野井の興味を大いにそそった。
そしてついにその登頂を決意するが、準備段階でスロベニア隊に先を越されてしまった。
それならば、スロベニア隊とは違う北東ルートから行く。
情報は極めて少なく、行ってみれば状況は予想よりはるかに悪かった。
今、ギャチュンカンにしがみつき、山野井は決断を迫られる・・・。
ギャチュンカンの標高は、7952m。
富士山で3776mとなると、「8000mに満たない」とは言えど、それがとてつもなく高い山であることが分かる。
空気は平地の3分の1程度、夜の気温はマイナス30~40度にまでなるという。
何日もかけて体を慣らすが、それでも順応できずに断念する人もいるのだ。
やはり登山家である妻の妙子も同行したが、食べ物も飲み物も全く喉を通らず、飲まず食わずでの登攀となっている。
壮絶なサバイバルの中、お互いに相手の力量を信じ、選ぶべき道を見誤らない。これぞプロだ。
しかしとうとう、山野井は吹雪の中、妙子を見失う。
体力は限界に達していた。ベースキャンプはもう近いはずだが・・・。
とにかく驚きの連続だ。超人は存在する。然るべき人が、然るべき挑戦をし、成し遂げるのだ。
ところでポチはどこに行った!?
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆
「凍」 沢木耕太郎
新潮文庫