タイトルからして、である。
読み始めてみれば、大人向けの童話とでもいうか。カエルさんのお話だ。
脱力~・・・、と思いきや。
アマガエルの「ソクラテス」は、国を狂暴なダルマガエルに襲われ、仲間達と旅に出た。
しかし、弱く小さなアマガエルは行く先々でも危険にさらされ、多くの仲間を失っていくのだった。
彼らには、生きていく場所すらないのか。
そんな時にたどり着いたツチガエルの国は、まさに楽園であった。
「カエルを信じろ」、「カエルと争うな」、「争うための力を持つな」という三戒に守られ、みんな平和に暮らしていた。
ソクラテスも歓迎され、やっと安住の地を見つけたかと喜んだのだが、やがて湧き上がって来る疑問。
崖の下には、恐ろしいウシガエルが暮らしているのだ。
なぜツチガエルだけが襲われないのか。
それは3戒を守っているからだとツチガエル達は信じて疑わないが・・・・・・。
これは、単なる物語として読むこともできるが、読み進むうちに何がその裏に隠されているか気付くことになるだろう。
あることを痛烈に風刺している寓話だ。
また時に哲学的でもあり、色んな読み方ができるのも面白い。
しかし何より、自分達はどう生きていくべきなのか。
しっかり自分自身で考えなくてはならないと感じさせる作品であった。
もしかしたらこの先には、とんでもない未来が待ち受けているのかもしれない。
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「カエルの楽園」 百田尚樹
新潮文庫