2、3日前のことだ。
私は買い物を終えて、駐輪場から出ようとしているところであった。
この日は調味料のボトル類や根野菜などを買い込み、自転車のカゴが重くて動かすのに難儀していた。
何とか体制を整えて動き出したところ、揉め事の空気を察知したのだ。
耳をそばだてながら進んでいると、「こすった」「オラ」というような凄む声が聞こえてきたのである。
そちらに目をやると、高級国産車、それもひと目見てグレードの高そうなタイプであるのが分かる車の後部で、私と同世代ぐらいの主婦と思しき女性が呼び止められていた。
どうやらその女性が車の後部を自転車でこすって行ったと、因縁をつけられているように見える。
うわっ、どうしよう、ちょっとまずいところを見てしまった模様EE:AE5B1
ジロジロ見ているとこちらにも飛び火しそうで怖く、家に向かいながら私は色々考えた。
警察?間に合うかな?携帯を持っていなかったので、家まで帰らなくてはならない。
知り合いのふりして割り込んでみるか?
でもちょっと待てよ?
私は現場を見ていない。
女性が本当にこすったのかもしれない可能性も、無きにしも非ずだ。
あんな車にこすったとしたら、誰だってしらばっくれたくもなるだろう。
しかしその可能性は限りなく低そうだ。
あの車。
そしてあの、絵に描いたようないかつい男。
脅すような口調は、誰にでもそう簡単にできるものではない。
あれは新しいタイプの当たり屋ではないのか?
なぜそう思うのだろうか。証拠はない。
もし本当にこすられたのなら、ああいうタイプの男は相当に怒るだろう。脅したのではなく、単に怒っていたのかもしれないじゃないか。
しかしそう考えられない理由はどこにあるのだろうか。
・・・車と見た目であった。立派な偏見である。
そう考えたら、どっちが悪いのか分からなくなってしまった。
そもそも現場を見ていないから分かりようがないが、女性が脅されているのなら助けたい。
でも果たして助けるべき女性なのかも分からないという状況である。
あんな風に見えても男は怒っているだけで、ちゃんと然るべき手続きをとるかもしれない。
じゃあ家に着いたらお店に電話して、駐車場でモメてると言っておくか。
見に行ってもらって、異常を感じたら通報してもらえばいい。
でも、家に着いた頃にはもうケリがついてたりして。
でもまだモメてるかもしれないし、あぁもう、どうしようどうしようEE:AE5B1
と考えている間に家に着いてしまった。
散々悩んだ挙句、結局私は何もしなかった。
それがまた心苦しい。
私は楽になりたかったのだ。
他人事にそこまで責任を負おうとするから、しんどいのだ。
いい格好つけしいのもたいがいにしろよ。
しかし今度は逃げた感が拭えず、後味が悪い。
だから実はブログに書くのは迷ったのだが、戒めだ、責めてくれ。
今の気持ちは「店に電話をすれば良かった」、それに尽きる。