「行ったか・・・。」
ダンナと娘ぶー子が出掛けていく気配が消えると、ゆっくりベッドから起き出した。
9時半だ。
早く寝たからか、意外とスッキリだ。
リビングはひどい事になっていた。
テーブルは昨日母が帰った時のままで、大小さまざまの皿が、アサリの殻、串、食べカスなどを乗せて広がっていた。
食べ始めるときはきれいなのに、なぜ食べ終わったというだけでこんなに汚らしいのだろう。
猫が食い荒らした形跡もあり。当たり前じゃ。
キッチンもひどい。
いつも私は招待した時間に準備が間に合わず、結局乾杯して飲みながら間に合わなかった分を作る事になる。
ところが作り終わる頃には結構酔い始めており、慌てて作ったためグチャグチャに散らかしたキッチンをそのままにして席に着いてしまう。
その上私は食べ方が汚い。
飲んで喋りながら食べるので、手元を見ていないのだ。
それは母からの遺伝なので、母の席もやはり汚れている。
ソファには、昨夜「やんのか」と言ってぶー子を威嚇するために脱ぎ捨てたエプロンが、そのまま放り出されていた。
これ、片付けるのか・・・。
ラーメン食べたい・・・。
昨日の残骸を起きるなり片付けるのと、昼に食べるラーメンのリサーチとどちらがいいか、私は素直で裏表のない性格なので、パソコンの前に座った。
2時間半、ラーメン情報を集め、やっと観念して皿を片付ける。
まぁ食器洗い機がやるんだから、半分以上ヤツの手柄だ。
それにしてもだ。
ラーメンには睡眠薬だか導入剤だかが入っている疑惑だ。
前々から言っているが、ラーメン食べて寝てしまう確率は、ほぼ100%である。
私を殺してしまいたい人、私から財布を奪いたい人、私を抱きしめたい人は、ラーメンを食べさせればイチコロだ。
そんな訳で、本日も帰りの車の中で寝てしまった。
家に着いたらそのままソファで目を閉じる。
目が覚めたらダンナがエルを抱えて隣で寝ていた。
次に目が覚めた時にはミが私の横に、次にはラが膝に乗って来て目が覚めた。
ぽ子一家、全滅である。
起きたのは7時、19時だ。
TSUTAYAとJマートに行かなくては。
はっ、そうだ、エルを連れて行こう。またしょうもない事を思いついてしまった。
エルはハーネスをつけられ、私に抱かれて後部座席に乗り込む。
Jマートはペットと一緒に入店できるのだ。ペット用のカートもある。
最初はカートに入れたのだが、すぐに肩に飛び乗ってしまう。
「こりゃあ、手乗りインコならぬ、肩乗り猫だねぇ!!」
ノリのいい店員が笑う。
「マッサージしてもらっちゃったりしてねぇ!!」
「『この肉球がたまらない』とか言って!!」
もういいって(笑)
ここでラのご飯を買った。
ミとエルはストラバイトを作らないような処方食だが、ラだけがその辺で売ってる安いカリカリを食べている。
で、その辺で売ってる安いのが切れて、コジマか病院かネットでしか買えない高いやつを一緒に食べていたのだ。
不経済である。
やっと今日、安いのが買えたのだが。
このエサの大きな袋を後部座席に横たえ、その隣に私がエルと座る。
「ねぇ、このエサ、口開けてないけど、エルには匂いするのかなぁ?」ダンナに問う。
「するする。ラもミも、袋食いちぎって食べちゃったことあるし。」
「うん。エルも今、噛み付いてる。」
エルは袋の端に噛み付いて、鼻息を荒くしている。
「ええっ!?やめさせて下さい~!!」
でもどうせ口、開けるんだよね?
「変なところに開けられると大変なんだよ!!」
上の方かじってますから。
「ああ・・・。」
ビリッと言って、とうとう大きな穴を開けてしまった。
そこに顔を突っ込もうとしたが、それはダメです。
あなたは一生、あの処方食以外食べちゃいけないんですよ。
一生。
ひどい話だ。ちょっとぐらいいいだろう。
私はエサの袋に手を突っ込んで、ひとつぶ出して手の平に乗せた。
エルはおいしそうにカリポリと音を立てて食べた。
幸せそうである。
もっと幸せにしてあげたい。
私はその小さな幸せを、3回ほど追加してやった。
私達の幸せはピザであった。
昼はこってりラーメン替え玉付き。
カロリーを消費するような行動は、今日1日まったくしなかった。
これら摂取したエネルギーは、どこへ行くのだろう?
どこへも行かないのだ。
恐ろしい。
またやってしまった。
まぁまた歩きますよ。
今日はもう寝る。