人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

同志

貴重な太陽の光だ。

また明日から雨だっつーじゃないか。

洗濯したぞ、さすがに。

チラリ。

う、見えてしまった、庭。

草、ボーボー。

カタバミとはケリがついたような事を書いたが、実はあんなの、庭の東側のほんの一部であった。

南側にも一面のタカバミと、名前もわからんような変なのが、ジャンジャカ生えてきている。

だらしのない庭だ。

しかし、私は決して草むしりが嫌いな訳ではない。

むしろ好きな方だ。

好きなあまりに機が熟すのを待っていると、忘れてしまうのだ。

熟した。完熟だ。今日はむしるぞ。

意気揚々と庭に飛び出す。

とにかく目に付いたものからガシガシむしった。

あっちもこっちも雑草だらけなので、適当にむしったって、何かが取れる。

釣りで言えば、入れ食い状態だ。

それにしても、地味な庭である。

11棟あるこの住宅地で、花がないのは我が家を入れてたったの3軒である。

他の2軒は、顔すらわからない、得体のしれない夫婦である。

その中の野田家は結構やってくれるので、嬉しい限りだ。

ちなみに当ブログに出てくる名前はほとんど仮名だが、誰にどう名付けたかを忘れてしまうため、次も「野田」の名で出てくるとは限らないので。

こちら側から見える野田家は、北側のほんの一部だけだが、その狭い家の裏側には、一度も抜かれた事のない雑草が、枯れては生え、枯れては生えて、もの凄い事になっている。

専業主婦だという奥さんを私はほとんど見たことがないが、噂によると完全に引きこもっていて、買い物すらダンナが帰るのを待ち、車で一緒に出ているらしい。

私は、私と同じ匂いをこの家の主婦に感じ取った。

やるかやらないかの差はあるが、彼女のような生活は私の理想である。

本当は家のことなんか何もせずに、ゲームやって店屋物とって寝たい時に寝て暮らしたい。

彼女がそこまで堕落しているかはわからないが、あんなに雑草を育てて枯らす勇気には感服する。

普通できないものじゃないか。

快適に生活したいという気持ちが勝つこともあるだろうし、見栄や羞恥心だってあるだろう。

私は、自分がきちんとした人間だから草むしりをするのではなく、「こんな状態では人様に何と思われるか」とビビる、小心者なだけである。

野田さんすごい。

アッパレである。

そんな訳で、この家に花などない。

ある日、車で外出した帰りに、近所のスーパーに寄った事があった。

買い物して戻ると、我が家の車の隣に、我が家と同じだが1つ前のモデルの車が停まっていた。

同じ色のRV車。

飾り気のない車である。

ステッカーやマスコットの類は皆無、非常に地味である。

チラッと見えた後部座席には、パンパンに膨らんだスーパーの袋がたくさん乗っていた。

匂う。

私はこの車のナンバーを見て、頭に叩き込んだ。

果たして後日、野田家の車のナンバーを見ると、やはりそうであった。

野田家の車がうちと同色で同じ車種であったのは知っていたが、私は匂いで彼らの車がわかったのだ。

どんな匂いかって、「ぽ子臭」だ。

具体的には言いようがないが、何となくわかってしまったのだ。

感動した。

気がついたら、1時間も庭にしゃがんでいた。

やってみりゃ結構楽しいものだ、と野田の奥様に教えてあげたいが、野田家の雑草がきれいになくなってしまうとムチャクチャ焦ることになりそうなので、まだ当分この状態でいて欲しいと、ぽ子は願うのだった。