人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

『みづち』は水の神様、神様だ~

モーターのコードに切れ目が入っていた。

猫の循環式給水器のコードだ。給水器のフチに当たっている部分である。このままだともっと深く切れていきそうな感じだ。

このまま使っていていいのだろうか?

モノは給水器である。何となく嫌な予感がする。

新しいモーターを買うことにした。

給水器を洗った時に気づいたので、一応すぐに動かせるように水まで入った状態であった。

先住の姉妹猫は、動きのなくなったただの水をそのまま飲んでいたが、アホ大五郎は納得がいかないようで、何度も手を突っ込んで不満そうにしている。

早く買わねばなるまい。

しかし、早く買わないのがぽ子である。とりあえず小さな皿に水を入れ、給水器の横に置いておいた。

数リットルは入りそうな給水器に対し、直径5センチほどの小皿である。気づくとすぐにカラッポになっていた。

そもそもこの給水器を買ったのは、楽をしたかったからである。

こまめに皿を洗って水を入れてあげるのが面倒で、しょっちゅう水を涸らし、猫達は風呂場や水道から水を飲んだりしていた。

ところがこの給水器は、フィルターを通して水を循環してくれるのだ。

水はたっぷり入るし、ほったらかしでいいのである。

・・・と、思っていたのだが。

「新しいモーターの件だけどさ。」

再び猫界に水不足が訪れ、早くモーターを買わなくてはと言うと、ダンナは言いづらそうに話し出した。

「あれさ、ラクになると思って買ったけど、実際どうなのか??」

・・・・・。

確かに。

あれは給水器とは言っても水を循環するだけで、自動で給水してくれる訳でも自動で洗ってくれるわけでもない。

長く放置すれば水位は下がるし、面倒がっていつまでも洗わないとモーターが詰まって唸り出す。

始めのうちはダンナが洗っていたので私は気づかなかったが、洗うのは結構ホネであった。

全部分解して、モーターに詰まったりこびりついたりしている汚れを取らなくてはならないのである。

これは私の性格的なものだが、一度洗い始めると徹底的にきれいにしたくなってしまう。

綿棒や大小揃ったブラシ、使用済みの歯ブラシと歯間ブラシまで使って細かいところまで汚れを落としていた。

「お皿に水の方がラクなんじゃ・・・。」

「自動」だの「循環」だのいう言葉に騙されていたが、確かにその通りであった。

それでも、楽なはずのその「皿に水」ですらまともにできなかったのだ。

モーターが壊れた現在すでに、水の皿は乾きがちである。

猫がこんなに水を飲む動物だとは思わなかった。

新しい水を入れてやると、その気配でワラワラと猫が群がってくる。

合唱の発表会で私が歌った2小節のソロは、「水乞いの祭りをやったらどうだろう」であった。

猫界でもリアル「みづち」が展開されていることだろう。

あぁ、私がしっかり水を循環させなくては。

新しい皿を2枚、買ってきたのだ。

さやえんどうの形をした、くぼみの3つついた皿だ。

3連である、これなら3匹同時に水が飲めるぞ。

そして、2枚あるのでいちいち洗って出さなくても、とりあえず流しにでも放り込んでおくことができるのである。ここがミソねEE:AEB80

下に敷いていたトレーも新調し(もちろんこっちも2つ買ったEE:AE4F9)、ちょっとワクワクして水を入れて出す。

すぐに大五郎とミュウがやってきて、並んで水を飲み始めた。

おお、いい眺めだEE:AEAAB嫌われ大五郎が、ミュウと一緒に水を。

しかしやがて大五郎は水を飲むのをやめ、隣のミュウをパチンと叩いた。

驚いたミュウは顔を上げて大五郎を見る。

そこをダメ押しでもう一度パンチ。

ミュウは飲むのをやめて、コタツに戻ってしまった。

入れ替わり立ち代り猫達は水を飲みに来たが、誰もいなくなってやっとエルがやってきた。

小さいエルはさらに小さく縮こまって、チロチロと可愛らしい音を立てていた。

そこをミュウが横切ると、何か言われた訳でもないのにウーと唸って一目散に逃げていってしまった。

3匹並ぶことはなさそうである。

水遣りは楽になったが。