北朝鮮の政治犯を収容する施設に送られたふたりの青年の、北朝鮮脱出までの手記である。
姜哲煥は1977年から約11年間、安赫は1987年から約2年間、いわれのない罪でこの収容所に送られていた。
そこは飢餓、病気、暴力がはびこる地獄で、生きて出ることは難しいといわれる収容所である。
生きるためにミミズを食べ、密告し、盗み、みんな必死であった。
監視員に激しい恨みを募らせつつ、必ずここを出る、強くそう願っていたふたりは、とうとう収容所を出ることができたのだ。
「ここさえ出れれば元通りの生活が待っている」と信じてきたふたり。
上巻は、収容所を出るまでの話である。
驚きの連続だが、何が驚いたかって、これは1977年から87年に実際に起こった話ということである。
偶然彼らふたりとも私と同い年であったが、私がディスコに行ったりバンドやったりしているその時、こんな地獄を見ている人々がいたという事実。
草やネズミを食べるとか、目が合っただけで死ぬほど殴られるとか、そんなのは映画の中の話ばかりだと思っていた。
つまらぬ言いがかりをつけられてみんな収容所に送られて来るが、こういうことがまかり通る北朝鮮は、やはり謎の国である。
今もまだ、このような施設があるのだろうか。
下巻は、北朝鮮からの脱出である。
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「北朝鮮脱出(上)」姜哲煥・安赫
文春文庫