何とか地獄の収容所を出所できた二人だが、出会いは出所先の耀徳。
出所とは言ってもそこは、収容所出身者が次に住むと定められた場所で、思い描いていたような世界ではなかった。
世の中は、法も規則も形ばかりでワイロが横行していた。
幸い彼らには外に親戚がいたので、そこから物資を調達することができた。
収容所に比べればマシな生活になったが、常につきまとう「収容所出身」のレッテル。
生活は安定せず、落ちぶれていく中、「再収容」の危険が迫る。
ここにいても地獄しかない。
「脱出」。
ついに二人の間でその計画が立てられる。
ところが、やっとたどり着いた国境の町で、見知らぬ男から声を掛けられた。
「お兄さん、どちらから来ました?」・・・・・・・。
哲煥は耀徳に留まり、収容所出身の仲間がいつも側にいたが、ワイロと工作によって外に出ることができた赫の方がむしろ悲惨であった。
転落、そして家庭崩壊。
脱出の決意を哲煥に告げるシーンには涙が出た。
この本は、彼らの「復讐」である。
自分を、家族を、仲間をここまで苦しめた北朝鮮の真実を暴露する。
それと引き換えに、家族を失った。残されたものはみんなまた、収容所に送られることになるだろう。
辛い選択をした彼らに、拍手を送りたい。
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「北朝鮮脱出(下)」 姜哲煥・安赫
文春文庫