何の根拠もないが、5分あれば支度はできると確信していたのだ。だからギリギリまで起きなかったのである。
確かに昨日は深酒したが、寝た時間は早い。
寝る前に読んだ小説の最後のクライマックス~ラストシーンは、まるっきり覚えてないが。
ああ、一番いいところを・・・。
ダンナの叔父さんの四十九日であった。
9時に駅前、8時半に出発の予定だったのだが、そんなんで8時25分まで寝ているつもりであった。
芸能人の豪邸でホームパーティをやっている夢だ。現実よりも、なんぼいいか。
しかしダンナがキレ気味に「もう8時15分だよEE:AE4E5」と起こしに来たので、ビビッて起きてしまった。
正解である。
5分で支度ができる訳がないじゃないか。
そしてダンナも私のギリ癖を見込んで出発時間を早めに言っておいてくれたので、何とか時間に間に合う事ができたのである。
車に乗るのは私とダンナ、九州から来たダンナの両親の4人である。
食事の時に酒が振舞われるが、運転手は飲む事ができない。と言うか、飲まずに我慢して運転する人がひとり必要なのだ。
私かダンナだが、こういう席では女が運転手となる暗黙のしきたりがある。
会場が家から遠い場合はダンナが運転するが、今回は近い店だ。
「飲まずに酒宴の席に2時間」という拷問が、私に下されるのであった。
ダンナは「酒飲み席」の方に、私は「酒飲まな席」の方に分かれて座る。
ダンナの親戚である、気楽に話せる人などいない。
しかも「親戚」である。粗相や恥は許されないのである。
粗相や恥があっても、酒に逃げる方がどれだけ楽か。
「あたりさわりのない話」というものは無限に湧いてくるものではない。
おのずと沈黙の時間が増えていく。
あぁ、しかし酒さえあれば無限に湧いてくるのである。
ヤケクソの特攻状態で斬り込んでいく勇気も溢れ出てくる。
酒のない丸腰では、手も足も出ないのであった。
チラリ、とダンナの方を見る。
顔を赤くしてビールを飲んでいたが、1時間もするとすっかり大人しくなっていた。
今日は一番の酒飲みおじさんが運転手の刑を受けており、みんな飲みが全然進んでいないのである。
ダンナは典型的なキャッチャー君なので、受け返すのは上手いが投げるのが苦手である。
結果、すっかり大人しくなって可哀相なぐらいであった。
実際私も「あれなら飲まないほうがまし」と、自分の拷問を喜んだ程である。
私ももう42だ。
こういう席も酒の力なしでソツなくこなせるようにならなくてはいけないが、世の中に酒がある限り、そんな日はなかなか来ないであろう。
法事のたびに、経験値を貯めていくしかない。
とりあえず100ptぐらい手に入れたつもりだ。
しかしレベルアップまでは程遠い。