「肥満に注意して下さいね。」
そう言われて、最後の診察が終わった。
避妊・去勢をすると、太りやすくなるそうだ。
そうだろう、ウチの先住はまん丸である。
すっかり元気をなくしていたエルだが、エリザベスカラーが取れる頃からメキメキ元気になっていったのだ。
あれから1週間が経とうとしているが、すでに大きな変化がふたつあった。
ひとつは、恐れていた食欲の増加である。
そもそもエルはムラ食いの小食で、干物みたいなやせっぽちであった。
食べるのも遅く、また、誰かが側にいないとすぐに食べるのを止めてしまうので、一体この子に食という欲はあるのだろうかと、常々考えていた程である。
それが今では先住を抜いて、新入りと同じペースでガツガツと食べ、もっとないかと物色するようにまでなってしまった。
キッチンに行けば、「あわよくば」とすっ飛んで来る。
テーブルにつけば、上に上がってきて皿の中の匂いを嗅いで回る。
それが駄目だと悟ると、私達の唇に直談判しに来るのである。
すごい執念だ。
ネットで調べたところ、避妊手術をすると、以前と同じ量を食べていても太るようである。
「3割減らして」ぐらいでいいらしい。
しかし現状では、以前と同じ量でも満足しなくなっている。
「わたし、あんまり食べられないの」とうつむいていたエルが、大食漢に豹変して驚いている私達であった。
もうひとつは、嬉しい変化だ。
人にしか懐かなかったエルが、ダイと仲良しになったのである。
ダイはまだ子供で暴れん坊なのでみんな辟易していたが、エルもしつこいダイからは逃げ回っていた。
発情期、つまりマゾ期に入ってからは一変して、ダイにはグニャグニャまとわりつくようになったが、それも時期的なもので手術が終わればまたクールなエルに戻ると思っていたのだ。
ところが今、まるで一緒に育った兄弟のように遊び、眠るのである。
もちろん今まで通りに人間も大好きだが、エルがダイを舐め回して一緒に寝ている姿を目の当たりにして、こちらも「驚き」の一言しかない。
そんな感じで、初老のラ・ミ姉妹と、若者ダイ・エルとで全く違う動きになっている。
孤立している仔がいないのが、嬉しい。