人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

変化

「肥満に注意して下さいね。」

そう言われて、最後の診察が終わった。

避妊・去勢をすると、太りやすくなるそうだ。

そうだろう、ウチの先住はまん丸である。

すっかり元気をなくしていたエルだが、エリザベスカラーが取れる頃からメキメキ元気になっていったのだ。

あれから1週間が経とうとしているが、すでに大きな変化がふたつあった。

ひとつは、恐れていた食欲の増加である。

そもそもエルはムラ食いの小食で、干物みたいなやせっぽちであった。

食べるのも遅く、また、誰かが側にいないとすぐに食べるのを止めてしまうので、一体この子に食という欲はあるのだろうかと、常々考えていた程である。

それが今では先住を抜いて、新入りと同じペースでガツガツと食べ、もっとないかと物色するようにまでなってしまった。

キッチンに行けば、「あわよくば」とすっ飛んで来る。

テーブルにつけば、上に上がってきて皿の中の匂いを嗅いで回る。

それが駄目だと悟ると、私達の唇に直談判しに来るのである。

すごい執念だ。

ネットで調べたところ、避妊手術をすると、以前と同じ量を食べていても太るようである。

「3割減らして」ぐらいでいいらしい。

しかし現状では、以前と同じ量でも満足しなくなっている。

「わたし、あんまり食べられないの」とうつむいていたエルが、大食漢に豹変して驚いている私達であった。

もうひとつは、嬉しい変化だ。

人にしか懐かなかったエルが、ダイと仲良しになったのである。

ダイはまだ子供で暴れん坊なのでみんな辟易していたが、エルもしつこいダイからは逃げ回っていた。

発情期、つまりマゾ期に入ってからは一変して、ダイにはグニャグニャまとわりつくようになったが、それも時期的なもので手術が終わればまたクールなエルに戻ると思っていたのだ。

ところが今、まるで一緒に育った兄弟のように遊び、眠るのである。

もちろん今まで通りに人間も大好きだが、エルがダイを舐め回して一緒に寝ている姿を目の当たりにして、こちらも「驚き」の一言しかない。

そんな感じで、初老のラ・ミ姉妹と、若者ダイ・エルとで全く違う動きになっている。

孤立している仔がいないのが、嬉しい。