人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ダイの去勢手術

現在では猫の去勢・避妊手術は当然の義務にまでなっているが、我が家のオス猫・大五郎もその義務を無事果たす事ができた。

なんせウチには未避妊の箱入り娘がいるので、その辺は細心の注意を払っていた。

特にダイにスプレーやなんかのいわゆる発情的な行動があったわけではないが、体重、月齢をクリアしたところですぐに病院へ連れて行ったのだ。

オスの手術はそう難しいことはない、という認識であった。

全身麻酔のリスクが若干あるぐらいで、日帰りで薬を飲ませ、一週間で元通り、と軽く考えていた。

しかし落とし穴は、別のところにあったのである。

夕方に迎えに行くと、ダイはもう診察台の上のキャリーバッグに入っていた。

「どうでしたか?」挨拶のついでぐらいに聞くと、

「はい、無事終わりました。でも・・・。」と先生は言いにくそうに「エリザベスカラーが気に入らないようで、ちょっと興奮しています。」と付け加えた。

キャリーの中のダイは、興奮しているというか緊張している感じで、縮こまって動かない。

ダイは病院が嫌いではなかったし、こんな姿は初めて見た。

カラー、嫌なんだね、可哀相に。

でも傷口を舐めると大変な事になるので、カラーは1週間外さないで下さい、との事である。

「相当嫌がって、その、ちょっと手から血が・・・。」

良く意味が分からなかったが、とにかく相当嫌らしい。

「どうしても1週間、はずせないんですか?」と聞くと、先生は「う~~~~~ん・・・。」と頭を捻り、「どうしても・・・・・・と言うなら、せめて3日・・・。」、しかしできるだけ外したくない、と言い張った。

そりゃそうだろう、とその場は納得して帰ったが、その3日が恐ろしく長い事がわかるまで、そう時間はかからなかった。

家に着いてダイをキャリーから出すと、まず彼は飛び上がってひっくり返って暴れだした。

パニック状態である。

よしよし、と撫でてやると落ち着くが、やがて思い出したように暴れ出す。

手を見て分かったが、「血が出た」とは「爪が折れて血が出た」という事であった。

ほとんどの爪が折れていた。

こんなんで1週間、いや3日も無理である。

私はネットで色々調べてみたが、ここまでひどい状態になるケースはなかなか見られない。

なくはなかったが、そういう人の出した結論は「勝手に取ってしまう」であった。

そもそもカラーなどつけない病院もあるそうだ。

さすがに術後すぐだから今取る、という気持ちにはならなかったが、明日にでも先生に相談してみよう、そう言ってこの晩はダイを横に寝かせ、興奮したら撫でて、朝まで過ごした。

朝になったら、すいぶん落ち着いていた。

・・・というか、諦めたようで、今度は寝たままピクリとも動かない。

ご飯も口元まで持っていかないと食べないし、これはこれで心配だ。

病院に電話したが、「一度取ったらもうつけられないだろう、傷口を守らなくてはならないので」と、取り合ってもらえなかった。

ダイはボケ老人のように寝たきりで、その後の2、3日を過ごした。

3日経ったら強引に病院に連れて行って直談判するつもりでいたのだが、やがてダイは少しずつ動くようになってきた。

テーブルに新聞を広げるといつものように飛び乗ってきたので、「もうちょっと頑張ってみよう」と様子を見ているうちに、1週間が経った。

正確に言えば、一日少ない6日目に病院へ行き、カラーを取ってもらったのだ。

去勢手術はもうこれで終わりだが、手術自体は今後ないとは限らない。

私はもうダイをあんな目にあわせたくはない。

色々調べたところ、透明のカラーや、布製でできたもの、角度が緩やかで視界が広いドーナツカラーというものなどがあることを知った。

今回は急で手に入らなかったが、こういうものを常備しておいて、こちらから病院へ持ち込むようにするなどした方が良さそうである。

こんな事もあるので、これから手術がある場合は参考にして欲しい。