木曜日。そろそろ欲しくなる頃である。
そんな木曜日に、「今夜はちょっと飲もうと思う」とダンナからLINEが入るのだ。
いつもならお約束の葛藤がありお約束の敗北、喜んで乾杯、となるはずなのだが、この日は違った。
「飲める」と思った時の高揚までは同じだったのに、それはほんの一瞬の事で、途端に体中が抵抗を始めたのである。
体が嫌がるまでは、飲み続けると良くあることだった。脳と体の攻防戦である。たいがい脳が勝ち、アルコールで体を鎮めるという力技で収めていた。
しかし今回は「嫌がる」などという生易しいものではなかった。必死の抵抗だ。徹底抗戦。一億玉砕の勢いで挑んできたのである。脳味噌は驚いた。
激しい動機と息切れ。さっきまではなかった。明らかに、「これから飲む」ということに反応している。
私は座り込んでため息をついた。
なんたる・・・。
これもまた、飲んでアルコールの力でねじ伏せられまいか。
この期に及んでまだこんな風に考える自分の脳が、恐ろしい。
そう、酒の力を借りれば今回もまた脳は勝利を収められるだろうが、さすがに今回はヤバい気がした。ここがアル中ボーダーになるのではないか。
まぁ待とう。まだ乾杯までは猶予がある。それまでに体調が持ち直せれば何の問題もない。
持ち直らなかった。
心拍数も、呼吸も、全くコントロールができない状態であった。
仕事から帰ったダンナは私も飲むことを想定して(つまり翌朝二日酔いで私が起きてこないということだ)朝ご飯まで買ってあったが、結局私は一滴も飲めなかった。
いつでも飲んでやるというつもりでいた。しかし飲もうと思うほどに、内臓の怒りを感じるのである。それはまるで、最後の警告のようでもあった。
この日を境に、私の飲酒量は激減した。飲めなくなった訳ではないが、彼らの抵抗が呪いのように巣食っていて、酒が進まないのである。
いよいよ潮時だろうか・・・・・・・・。