人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ゴキュゴキュと飲める酒

夕方に歯医者の予約が入っていたから、仕事は午前からの出勤だ。

毎度そうだが時間に余裕がなく、恐ろしく忙しかった。

毎日これだけ忙しければ、太る暇さえないだろう。

つまり現在のぽ子は、平和にのんびり暮らしているという事だ。

12時の休憩になるとロッカーへ急ぎ、着替え、レインコートを着て家に戻る。

別に帰る必要もないのだが、気心の知れない人間と一緒に食事をするのはムチャクチャ苦痛である。

貴重な昼休みだが、時間は短くとも家に帰る方を選ぶ。

家に着くとレインコートだけを脱ぎ、まずは猫にご飯をあげる。

そして次にジャケットを脱ぐと、用意しておいたうどんの汁を火に掛ける。

用意しておいたうどんの汁とは、つまり3日前の鍋の残りである。

鍋を火に掛けたままトイレに駆け込む。

横着して作業着のズボンの上にスウェットを穿いてきたので、脱ぎ着が大変だ。

トイレから飛び出すと、温まったうどんを丼に移す。

読みたいページを広げた新聞の上に丼を乗せ、読みながら食べる。

ダンナと、今日行くラーメン屋についてメールでやりとりする。

時間がない、さっき脱いだ服をまた着て、家を出る。

走る。自転車を、蹴るようにまたがる。

仕事が終って家に帰ると、今度はラーメン屋の地図を携帯に送る。

苦労して送ったそれは、結局URLだけであり、役に立たなかったのだが。

困ったのは着替えだ。

別に普段着でもいいのだが、大都会に出るのに何だか情けない。

待ち合わせるダンナはスーツなのだ。

しかし私の手持ちのスカートはたったの2枚。

ひとつはクリスマスに着てしまったニットのワンピ、もうひとつは恐怖のヒラヒラミニスカートだ。

諦めていつものジーパンで行く。

雨だからバスだ。

大した距離でもないのだが、もう疲れた。

車内は暖かく、気が付いたら寝ていた。

たまたま目が覚めたら、降りる停留所の手前であった。

ポール・マッカートニーの曲を他のビートルズのメンバーが歌っている夢を見ていた。

あの曲は何だっけ・・・?と思いながら駅に向かったが、ギリギリで1本逃してしまった。

次に来た電車では座るなり爆睡、降りるときに傘を置いてきてしまった。

歯医者では、またまた虫歯予備軍を3本ほど見つけられてしまい、頭が痛くなる。

正月はサボッたが、私は一生懸命磨いていたのだ。

家族の中では一番、磨いている時間が長いと思う。

もしかしたらこの界隈では一番かも、と思うほどだ。

磨きすぎて、今度は知覚過敏になったと言うのに。

嗚呼何故、歯を健康に保つのはこんなに困難なのか。

どうしてダンナやぶー子は虫歯にならないのか。

不思議である。

ダンナとは新宿で待ち合わせだ。

今日は予報では雪と言われていたぐらいだ。

外に出た人なら知っていると思うが、ムチャクチャ寒かった。

私達が新宿で落ち合ったころには横殴りの雨になっていて、帰る頃には、傘で守られなかった下半身がビッショリ濡れてしまった。

体が濡れると、「寒い」を通り越して「冷たい」。

動く度に冷え切ったジーンズが腿を冷やし、靴下まで濡れた足先が凍える。

本気で寒い。

娘ぶー子よ、家にいたらリビングを温め、風呂を沸かしておいてくれ・・・。

ぶー子からメールに返事はなかったが、家に着くと風呂場の電気がついていた。

どうやら風呂に入っていてメール気付かなかったようだ。

着ている物が冷たくて不快だったので、リビングに入ると私は何よりも先にジーパンと靴下を脱いだ。

そのまま足湯につかるために、ぶー子のいる風呂場に有無を言わさず突入だ。

足湯のつもりで湯船に足を入れたが、そうなると冷え切った上半身も黙ってはいない。

もう理性も常識もない。

勝手に体が服を1枚ずつ脱ぎ、風呂場の外にそれを投げ、どっぷりと湯船に首までつかった。

あああ・・・、極楽。

普段の私の入浴は清潔を保つためだけにあるので、このように気持ちいいなどと思ったことがない。

「カラスの行水」などと家族にはバカにされているが、時間がもったいないのだ。

時間さえあれば、私だって風呂を楽しむのかもしれない。

泣ける話じゃないか。

私は忙しくて風呂を楽しむ時間すらないのだ。・・・本当か?(笑)

体の芯まで温まったので、その後はバスタオル1枚でソファに伸びた。

至福の時だ。

もし私が暇人になったら、ゆっくり風呂に入って、その後はソファに伸びてみせる。

そうか、もしかしたら私は、グータラだけど暇ではないのかもしれない。

ちょっとこれは自分をこれまで過小評価していたかもしれない。

みなさ~ん、ぽ子はグータラな人間のクズ!ですが、暇人ではありませんよ~~!!

風呂から上がると今度は猛烈に喉が渇いてきた。

あいにくビールは1本しか冷えてなかったので、すぐになくなってしまった。

サワーの在庫は1本。

これもダンナと分けたらあっという間になくなってしまい、まだまだ渇きの癒えないぽ子は満足できない。

サワーのようにゴキュゴキュと飲み干せるものが欲しい。

うちにある焼酎を何かジュースで割るか。

しかし、うちにあった焼酎は、芋焼酎と泡盛という、どうしようもなくスメルものブラザーズである。

しかし他にないので、泡盛にコーラを入れた。

その気の抜けたコーラは思ったより少なかったので、サイダーを足した。

これを読んで下さる愛しい方々に、いい事を教えて差し上げます。

泡盛をコーラとサイダーで割ると、とんでもなくまずいです。

ワインを割ればよかったと気付き、飲みなおしているところである。

長い1週間だったが、充実して楽しかった。

やはり、休みも時々あるからいいのかもしれない。