人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

恋をした

激しい頭痛だ。二日酔いである。

なぜかベッドに対して垂直に寝ていた。布団の上で洋服のまま。

寝た時の記憶がない。

恐ろしい。

またお義母さんの前で泥酔してしまったようだ。

しょうもない事を言ってなければいいのだが。

まずはお墓参りである。

目が覚めて「これなら今日も飲めそうだ」と思ったのだが甘かった。

時間が経つにつれて二日酔いが酷くなってきたのだ。

オエ。

二日酔いで墓参りである。

オーマイガッドだ。

たまらず帰りに液キャベを飲んだが気休めである。

このあと家に坊さんが来てお経を上げた後会食だ。

会食=酒。

オエゲロ無理。

すぐにでも吐けそうだったが、出先で吐くのはイヤだ。家まで頑張ろう。

くっそー、なんであんなに飲んでしまったのだ、ダンナの親の前で。

親戚の家で今度は坊さんのお経だ。

笑ってしまうのではと本気で心配していたが、実際はそれどころではなかった。

眠くて眠くて本当に寝てしまいそうで参った。

しかし眠いうちはまだ良かった。

ハンパじゃないのだ、足のしびれが

信じられないッ。

痛いッ。

無理ッ。

やめてッ。

誰か何とかしてッ。

そのうちしびれを通り越して感覚がなくなってきた。

坊さんめ、ほんの4、5分とか大嘘こきやがってどこがじゃ。

おやじどもは次々と足を崩している、妬ましい。プライドをなくした犬どもめ。

変なところで強がったため、終った後まったく身動きが取れず、むしろこっちの方が恥であった。

次はいよいよ酒である。失礼な言い方だろうが、法事の会食も今日の私には単なる酒である。オエ。

うなぎ屋だったから「また正座か。」とビビッたが、思いがけずテーブル席であった。

1つのテーブルに6人座るが、あらかじめ席は決まっていた。

私たち夫婦の席は60代のオヤジさんばかりの席だ。喋ったことないし。

嬉しくない逆ハーレムだ。席真ん中だし。

私の右隣の人は物知りで良く喋る人で、とにかく解説やウンチクばかり喋っていた。

その人が皿に乗っていたインゲンを箸でつかんでアスパラの解説を始めたからヤバい。

これは笑っちゃいけない状況レベル2である。

そう思うほどに笑いがこみ上げ、思わず「グフフ」と言ってしまった。

グフフで済んだのは、ちょうどビールを口に含んでいたからである。

このウンチク氏は、自身は運転があるから全く飲まなかったが、とにかく飲ませる

大袈裟でなく、一口飲むだけで注ぎ足すのだ。飲まないでいると「ホラホラ!」と煽られる。

このテーブルは私たち夫婦以外60代オヤジなのだ。

私たちが集中的に飲まされた。お陰でお腹はゴボンゴボンである。

斜め前に座った人は、小柄だがハンフリー・ボガートに良く似た無口なオヤジだった。

ボギーに似てるせいもあり、ハードボイルドな雰囲気が漂っていた。

ところで私は場を白けさせないようにできるだけ喋るように努力したが、もともとの性格がこんなんだからついしょうもない事を言いたくなる。

でも君たちオヤジレンジャイにはわからんだろうなぁ、と思いながらもついポロポロ言ってしまうのだが、案の定オヤジレンジャイは笑いどころを理解せずスルーするところを、ボギーは笑うのだ。ひとりで静かに。

ボギー、やるねぇ。わかるのか、私の言葉が。

そのうち右隣のウンチクがテーブルに携帯を出して置いた。おもむろにだ。

プリクラが貼ってある。ハイハイ、ツッこめってか。

「あれ?ちょっと見ていいですか??あれ~?これ誰ですかぁ?!」

孫であった。孫モードに入ったのだ。

ところで私にも「エルモード」があるのでこの辺は理解があるつもりだ。

ひとしきり孫だの娘だのの話をした。私もいつか接待される日が来るのだろうか。

ふと気付くと、本当に悪気はなかったのだ気付くのが遅れたが、ふと気付くとボギーが携帯をいじっていて

「あぁ、ここに孫が入ってた。」

と呟いたのだ。

ええっ?!ボギーに孫?!

しかも孫モード!?

しかしアピールが遠慮がちだったのと私の気付くのが遅かったのとで、ツッこんであげられなかった。

私はこういう「○○バカ」については心暖かいのでぜひノッてあげたかったのだが、ボギー、ワンモアチャンスと思いつつタイムオーバーであった。

しかしボギーが孫である。

ジジ馬鹿やっちゃったのである。

私はすっかりやられた。

私の笑いを理解し、しかしジジ馬鹿の一面、でもシャイ。そして見た目ハンフリー・ボガートである。

惚れた。

私の大切な休みを潰す法事も、楽しみになってきた。

次はいつ?

わたくし、お孫さん褒めてあげてよ。ウッフフ。

私に惚れちゃダメよ、ボギー。