人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

4年後の命日

デスク正面のカレンダーを見上げる。日課だ。忘れていることはないか。

火曜日に小さく「アカペラ」と書かれている。そうか、早めに復習しておかなくては。

本当に、忘れっぽいタチだ。予定はダメ押しであちこちに書かれている。スケジュール帳を開く。あ。

ミュウの命日であった。

 

辛うじて当日に思い出せて良かった。それでも「辛うじて」になっていることを、悲しく思う。

ミュウは遠くなっているのだろうか。そうは思いたくない。

時計を見ると、8時。4年前のこの時間、まだミュウは生きていた。

思い返す。

静かな朝だった。

予感はしていた。20歳。もう飲むも食べるもできなくなり、少しずつ終わりに近づいていた。それもいよいよ、という朝だったのである。

 

4年経っても、悲しい朝だ。泣いてしまうと悲しみは加速する。私は声を上げて泣いた。

「今日ミュウちゃんの命日だよ。」ダンナにLINE、悲しみのお裾分けじゃ。

ダンナの返事は意外なものだった。

「ミュウの命日は、12月2日だよ。」

え?訂正された??私間違えてた??カレンダーを見上げる。

その日は火曜日だった。そして12月2日は月曜日だった。

「昨日だったの!?」

完全に過ぎ去っていたのか。何もしてあげられなかった。死んだ子に何をしても仕方ないのだが、これでは私が辛い。

そしてダンナの次の返事は、もっと意外なものだった。

「まだ11月だよ。」

・・・え?

カレンダーを見上げる。

11月最後の週には、「燃えないゴミ」、「父電話」、「いっちゅーリハ」と書かれていた。どれもまだこれからのものだ。

 

私はミュウの骨壺を見る。

泣き損とまでは言わないが、滑稽であることには違いないだろう。ミュウは呆れているだろうか。

しかしここで気づいて良かった。アカペラのレッスンに行くところであった。

 

11月26日のできごとである。