人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

長さか、質か。

相変らずエルの食欲はすさまじく、私達はそれに付き合ってせっせとご飯をあげている。

たっぷり出したつもりが、食べ終わった先からまたねだり出すのだ。そしてその勢いも、凄い。

流しの上にまで乗ってきて、手でチョンチョン「よこせ」と催促するのだ。これを数回繰り返す。

ハッキリ言って、異常だ。

一体エルぐらいの猫が必要とする分量に対して、どれぐらい食べているのか?

面倒だが、いちいち測ることにした。

エルが食べるご飯は、飽きたりするので混ぜ飯状態になっている。種類によってカロリーが違うから、種類ごとに測らなくてはならない。

おねだりが壮絶なこともあり、計量も壮絶だ。

1回に多くて30g、少なくて10g。

多くても少なくても、不安になる。やがて頭の中は、エルのご飯のことでいっぱいになってしまった。

そればかりか、もしかして病気ではないかと呼吸数やら睡眠時間まで気になって来る。もう病院に連れて行った方が早いのではないか。

 

病院。

エルはもう18歳だ。検査をすれば、何かしら悪い数字が出て来るはずである。

そうなれば、治療の始まりだ。

定期的に検査に行き、薬を飲ませ、療養食を食べさせる。そのどれも、猫にストレスになるものだ。

治る病気ならまた話は別だが、年齢的なものから来ているのなら、もう私は自然に任せたいと思っている。

そのぶん寿命は短くなるだろう。いや。

治療で寿命を延ばしているのだ。

QOLなどと言うが、寿命の長さではなく、クォリティ、その質が大事なのではないか。

美味しものをお腹いっぱい食べて、好きなところでぐっすり眠る。

その変わらぬ毎日を、壊したくない。

 

飼い猫の運命は、飼い主が握っていると言っても過言ではない。

私の判断はエルを不幸にするのか。苦しめるのか。

正直、自信はない。

もちろん少しでも、長生きして欲しい。

でもそれ以上に、幸せでいて欲しい。

 

計量は、やめた。

あるがまま、毎日を過ごすことにする。

異変があったらその時に考える。

今は最後の幸せな時間を、お互いに感じていたい。