父に印刷物を頼まれていたのだ。パソコンもワープロもないので、ちょっと作って欲しいと。
それができたので届けに行ったのだが、このご時世である。渡して帰るだけだ。
父は寂しいのか退屈なのか、本当は少しぐらい話がしたかったようだが、高齢の父と呼吸器の弱い私では、移すも貰うも危険である。野良犬を振り切るようにして帰ってきたのだった。
本当に、嫌な気持ちである。
長電話を切った時に感じる徒労感と、それを感じる自分の薄情さ。
優しくしたくてもできないもどかしさ。
今回も、袋いっぱいにお土産を渡されたのだ。
家に帰って開けてみるとそれはいつも同じなのだが、塊のチェダーチーズとパルメザンチーズ、輸入のハモンセラーノとスモークサーモン、オリーブの袋詰めに大きなクロワッサン。どれもちょっといいものばかりだ。
それをひとつずつ冷蔵庫に入れていると、どうしようもなく悲しくなって泣けてきた。
早く死んで欲しいとすら思うほど、憎んだ父。
なんでこんな事するのよ。
憎む方が、楽だった。
悔いたり心配したり悲しんだりするよりも、ざまあみろと思う方がよっぽど楽だった。
愛情は、重い。
失いたくなくなるから、重くなる。
そしてそれは、いつか必ず失われるのだ。生きている限り。
重い。
怖い。
悲しい。