どれにするか。
ハンガーにかかった洋服を見ながら、私は考える。
父の家に行くのだ。そんなにめかし込む必要はないが、ちょっと小綺麗にしていくと父は嬉しそうになるのだ。
「自分の子供」という自分の作品だ。そりゃ綺麗がいいに決まっている。
私はマキシ丈のカジュアルなワンピースをチョイスした。
単色なので、単調だ。アクセサリーが欲しい。
もう滅多にネックレスなどつけることはなかったが、どれ、久しぶりに出すとするか。
アクセサリーの入ったケースを取り出す。
自分で買ったものは、安物ばかりだ。しかも長い時間が経ち、変色している。
「あ。」
ちょうどいいものがあった。父が昔、お土産に買って来たネックレスだ。
男親である。やはり娘には女らしさを求めるのか、父はお土産に良くアクセサリーを買ってきたものだ。
「ちゃんとしたものを身に付けなさい」と、装飾品はいつもきちんとしたものを買って来た。
しかし当時ティーンエンジャーだった私には、本物であることよりもデザイン性の方が大切で、父が買ってくるアクセサリーはどれもやぼったく感じ、使うことがないままになっていた。
袋から出してみるとそれは、まだ美しい輝きをそのまま保っていた。
黒と金の配色。精巧な装飾。品のあるデザイン。
迷わず私は、それを首にかけた。
父はこのネックレスのことは覚えていなかった。
それでも最初に私を見ると、「おおっ、今日はどうした。」と目を細めた。
もらってすぐに付けてみせるような気遣いもできなかった、若い頃。貰うだけ貰ってしまい込み、父の望んだ形で出てきたのは40年後である。
今はとても気に入っている。
父がいつか消えてなくなってしまっても、父の想いと共にこのネックレスは残る。
こんなプレゼントをくれた父には、感謝したい。
ペンダントトップは4センチぐらい。
凄く細かい装飾。
酔っぱらって壊さないようにしなくては・・・・・。