人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

40年後のネックレス

どれにするか。

ハンガーにかかった洋服を見ながら、私は考える。

父の家に行くのだ。そんなにめかし込む必要はないが、ちょっと小綺麗にしていくと父は嬉しそうになるのだ。

「自分の子供」という自分の作品だ。そりゃ綺麗がいいに決まっている。

私はマキシ丈のカジュアルなワンピースをチョイスした。

単色なので、単調だ。アクセサリーが欲しい。

もう滅多にネックレスなどつけることはなかったが、どれ、久しぶりに出すとするか。

アクセサリーの入ったケースを取り出す。

自分で買ったものは、安物ばかりだ。しかも長い時間が経ち、変色している。

「あ。」

ちょうどいいものがあった。父が昔、お土産に買って来たネックレスだ。

男親である。やはり娘には女らしさを求めるのか、父はお土産に良くアクセサリーを買ってきたものだ。

「ちゃんとしたものを身に付けなさい」と、装飾品はいつもきちんとしたものを買って来た。

しかし当時ティーンエンジャーだった私には、本物であることよりもデザイン性の方が大切で、父が買ってくるアクセサリーはどれもやぼったく感じ、使うことがないままになっていた。

袋から出してみるとそれは、まだ美しい輝きをそのまま保っていた。

黒と金の配色。精巧な装飾。品のあるデザイン。

迷わず私は、それを首にかけた。

父はこのネックレスのことは覚えていなかった。

それでも最初に私を見ると、「おおっ、今日はどうした。」と目を細めた。

もらってすぐに付けてみせるような気遣いもできなかった、若い頃。貰うだけ貰ってしまい込み、父の望んだ形で出てきたのは40年後である。

今はとても気に入っている。

父がいつか消えてなくなってしまっても、父の想いと共にこのネックレスは残る。

こんなプレゼントをくれた父には、感謝したい。

ペンダントトップは4センチぐらい。

凄く細かい装飾。

酔っぱらって壊さないようにしなくては・・・・・。