アル中小説「今夜すべてのバーで」以来である。
今度は薬物中毒だ(笑)
外国人にまで「ヘルハウス」と呼ばれ、ジャンキーの巣窟として有名な大島の家。
彼は一応幼い子供と妻と暮らしてはいたが、常にヤク中仲間が入り浸り、常に子供を除く全員がラリッていた。
起きては薬を酒で流し込む毎日。
分裂症のガドくん、オーストラリアから来たショーンはウォッカで薬を服るツワモノで、その彼女のコッケを大島がつまみ食う。
しかし大島の妻「み」もまた、万引きで生計を立てている岡本とイチャついているし、もうモラルもルールも法律も何もあったものではない。
ただひたすらに「み」の貯金を取り崩して、薬を飲んでラリッているだけなのである。
しかし平和だ。
誰も「こんなんじゃいけない」などと言わないし、出された薬は遠慮なく飲む。
貸しも借りもなく、入れ替わりはあってもみんな仲良く暮らしていたのだった。
ジャンキーがジャンキーを呼び、今日も「ヘルハウス」はぐにゃぐにゃにラリッている・・・。
これは・・・。
感想が難しい・・・・・・・。
ストーリー的には大きなドラマもなく、ただ大島の日常が描かれているだけなのだが、題材が題材なだけに面白い。
開けてはいけない扉を、隙間から覗いているようないけない魅力である。
何をやっても何があってもOK的な彼らの思考もムチャクチャで面白く、ドラマなど必要なかった。
しかしだ。
時々現れる、ラリッた大島の混沌とした言葉のイメージの世界。
これはシラフの人間には拷問であった(笑)
そしてその言語が囲繞できる猫の額ほどの土地とショウジョウバエでまっ黒になったミルクティのコップと、未だ名づけられないさまざなの感情と包茎の先のピアスと誰に言うでもないさよなら、大事なセリフを吹き飛ばされて子供みたいに追いかけるT字路、そうお前の匂いのする街でとてもシラフじゃいられない、マラリアにかかった赤い月、呪言・・・
暗い路地、芋の残った皿、空気銃、獣の通った跡、待ち望んでいた幻覚、足にできたマメ・・・
1回目のラリパッパでこれが20ページ、ほぼ改行なしに続く。
最初は全て読んだ。
2回目も一応読んだ。
私は寝る前に少し読むしかできないので、3日間に渡る苦行であった。
翌日になったらどこまで読んでいたかなど思い出せず、かといってここまできて飛ばして読むのもシャクなので、大きく前から読み直す。
ジャンキーではないが、私も一応薬を飲んでいるのだ(笑)こんなんでは数行で寝てしまう。
なのでこの言葉のイメージを、シュルレアリストが描いたらどんな絵になるだろうかと、ひとつひとつ想像して読むようにした。
そうでもしないとつまらないからである。
それでも2回が限界だった(笑)らも氏には悪いが、その後はすっ飛ばして読んだ。
ところが驚いた事に、解説を書いた町田康(彼は町田町蔵として、作品中に登場している)は「不明確な言葉はひとつもない」と言ったからたまげた。
分かる人には分かるのか。
住む世界が違うようである。
私はせいぜいウーロンハイでカラオケでも歌いますよ・・・。
そして、これはらも氏の自伝的小説であると後で知り、私はもう一度ぶったまげた。
禁断の世界を垣間見た天才のひとりなのだろう。
好き嫌いは分かれると思うが、私は面白かった。
優等生にはオススメしない。
ぽ子のオススメ度 ★☆☆☆☆~★★★★☆
「バンド・オブ・ザ・ナイト」 中島らも
講談社文庫 ¥590