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「あの野郎!!EE:AE4E5」
あの野郎。
あなたの彼氏があの野郎。
夜になると娘ぶー子は携帯片手にリビングに下りてきて、まずひとことこう言った。
顔は笑っているのでギリギリ耐えてはいるようだが、相当ご立腹の様子。
「あのヤロー、カラオケ行きやがる、私が行こうって言っても行かないくせにカラオケ行きやがる、許せねー!!」
つまり、ぶー子が誘った時は断ったくせに、職場のみんなで行くのが気に入らないらしいのだ。
「あの野郎」「あの野郎」と言っているうちに「あの野郎」から電話が来たようで、待ってましたとばかりに携帯を握る。
「ずるい~。」
「そんな事言ってないしー。」
「えー。」
あの野郎あの野郎と言ってた割には、しおらしい責めである。
ぶー子が怒る筋合いではない事は、どこかで感じているのだろう。
「やだー。」
「でもやだー。」
どうやらカレは色々交換条件を出しているようだが、ぶー子はなかなか納得しない。
「・・・ん?そぉ??わかった、じゃあ行ってらっしゃあいEE:AE595」
商談成立か。
「どうなった?」聞いてみると、
「チョコ買ってくれるってEE:AEAA6」
・・・・・・・・チョコ。
この子はいつか、悪いおじさんに誘拐されるかもしれない。
そんな訳でその晩、ぶー子の彼氏は職場の仲間とカラオケに行き、ぶー子は珍しく大人しく寝たのだった。
その翌日が昨日なのだが、まるで起きてこない。
まぁ別に珍しい事でもないし、私も月曜日でかったるかったので、ご飯の支度が一人分減って助かったと思っていた。
しかし昼過ぎに起きてきた。ぶー子にしては早い。
ぶー子はまず玄関を開けてポストを覗き、不機嫌そうにリビングに入ってきた。
「ねぇちょっと、チョコ持ってった?!」
は?
チョコもなんも、私もダラダラしてたんでポストを開けすらしていないのだ。
てかそのチョコって・・・。
「くそー、あいつ、チョコ買ってこなかったEE:AE4E5」
まるでパシリに文句でも言うように言い捨て、再びぶー子は自分の部屋に戻って行った。
なぜそこまでチョコなのだ。
そしてなぜまた寝る??
ジョギングから戻るとぶー子はパソコンのアメーバピグで遊んでいた。
戻りしな、近所の子供に「猫見せて~EE:AE5BE」と言われたので庭に来てもらったのだが、途端にぶー子は逃げた。
15分ほど猫たちを見たら子供たちは帰って行ったが、入れ違いにぶー子は戻って来る。
「なんで逃げる??あの子、可愛がってたじゃない??」
「だって、こんな格好、見られたくないしー。」
その時ぶー子が来ていたのは、「緑のたぬき」の緑色のTシャツであった。
「そんな、子供相手に・・・。」
「ダメなの!あの子はね、私の事おしゃれだと思ってるんだから!」
そこで見栄はるか。
21年間一緒に暮らしているが、いまだに私は彼女が掴めない。
シャワーを浴びて戻ると、ぶー子はいなくなっていた。
静かになったので私はブログの下書きを始めたが、そのうちまた現れて、もう1つのパソコンの方で曲編を始めた模様。
夜にダンスの深夜練習があると言っていたが、それに使う分だろうか。
静かに勤しんでいた。
一度だけ「晩ご飯、何時ッ!」と苛立たしげに振り向いたが、ぶー子が立ち上がったのは晩ご飯ができ上がる直前であった。
「ひゃ~~、終わった終わった、もうどうなるかと思った、大変だった~!!」
そう言うと口笛で「山の音楽家」を吹いて歩き回り始めた。
なんて絵に書いたような能天気。
そんなに大変なら、なんでそんなに寝たり遊んだりしていたのだ?
それになぜか、「わたしゃ音楽家」の「家」の部分だけ、異様に音が上がる。
「なんかおかしいよ、『音楽家』の『家』の音、高すぎない??」
「あ、これ?クソガキが歌ってる感じっぽくしたのEE:AE5BE」
21年間一緒に暮らしているが、いまだに私は彼女が掴めない。
この後ぶー子はのんびり晩ご飯を食べ、着て行く服に迷って時間がなくなり、「あの野郎EE:AE4E5」ぐらいのテンションでイライラしながらでかけて行った。
21年間一緒に暮らしているが、いまだに私は彼女が掴めない。
消去法でいくと私に似ている事になるが。