人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

昭和天皇の妹君

実は昭和天皇の弟・三笠宮崇仁親王に、双子の妹がいるというミステリアスなドキュメンタリーである。

大正天皇と貞明皇后の間に崇仁親王が生まれた当初は、まだ古い言い伝えや慣習が根強く残っていた。

昔は双子が生まれる事を「畜生腹」などと言って忌み嫌っており、特に男女の双子が生まれた場合は「前世で情死した男女の生まれ変わり」として忌まれた。

そんな中で双子を身ごもった皇后は、秘かに妹の方を寺に入れるように手配したという話である。

厳密には戸籍上でのみ旧公家に養女に出し、そこから里子にすぐ出され、5歳で尼寺へ入山とのことだ。

未だに謎とされていて真偽の程は分からないが、真実をつきとめようと食い下がる著者の情熱には恐れ入った。

彼が集めた証言は、それが事実なら「双子説」には信憑性が出てくるものばかりである。

ただその肝心な「証言」をしたとされる人物が後にそれを否定していたりするので、ただの読者としてはどうにも判断しがたいという、後味の悪さが残る。

読み物としては、読みにくい事この上なかった(笑)

それは私の知識のなさからきているが、皇族独特の世界観、聞きなれない言葉、出てくる人物の多さ、かつ複雑で、途中でもう整理しながら読む事は放棄した。

何となくフーン、ぐらいなスタンスで読みきったが、まぁ頑張りました(笑)

著者は「スキャンダルを暴く、という姿勢ではなく、一人の人間にこのような悲劇が起きている事を世間に知って欲しい」という気持ちであったとの事だが、まさに「執念」とも言えるその情熱が凄まじい。

恐れ多くもよくぞここまで・・・という気持ちに何度もなったが、良し悪しである。

誰もこの悲劇を嘆いている訳ではないのだ。

いま執拗にほじくり返すことが果たして良い事なのか、尼僧となった「糸子」自身もそれを望んではいなさそうな言葉から、複雑な気持ちである。

いずれにしろ、これが嘘やこじつけ、思い違いであったら大変な話だが。

ぽ子のオススメ度 ★★☆☆☆

「昭和天皇の妹君」 河原敏明・著

文春文庫 ¥590(税別)