人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

こんぺい党

やっと酒が抜けた。

ダイエットを決心しなければ昨日も飲んでいたかもしれないが、おかげで久しぶりにスッキリである。

しかしまたゲームのせいで寝る時間が遅くなり、寝不足であった。

せっかく酒も飲まなかったし昨日こそは早く寝ようと目論んでいたのに、そういう時に限って久しぶりの人に呼び出されたりするのである。

当然朝は眠かったが、今日はダスキン回収の日である。寝ている訳にはいかない。

でも寝たい。

だから寝ながら待つことにした。

リビングで寝ていればすぐに気づいて出迎えることができるだろう。

しかしダスキンレディが来た時はちょうど眠りのファンファーレが頭に鳴り響いていた頃合いであり、こんな甘味なものを逃す気はしない。

私は笑顔を振りまいて最短で彼女を帰し、再び眠りについたのであった。

あこりゃやっべー寝ちまった、と思って目が覚めたのは10時。悪くないだろう。

家事燃えだ。

やればやるほどゲームが許される気がする。

家事燃え。

キッチンの引き出しの取っ手には、大きなレジ袋がふたつ、パンパンに膨らんでぶら下がっていた。

ビン・缶・ペットボトル・食品トレー、つまりビール缶・サワー缶・ワイン・炭酸水・惣菜の残骸を入れているのだ。

どんだけ飲んで、どんだけ晩飯の手抜きしてるんだよ、って袋だが、これを外の大きなゴミ箱に仕分けして入れなくてはならない。

もう限界である。

上の方は入っていない。

差し込んであるだけである。

揺らすな!

大きな袋をふたつぶら下げて出ると、庭のゴミ箱の前で仕分けだ。

早くしないとご近所様に見られてしまう。

「お前一週間なにやってたの」の図である。

幸い会ったのはキャッチボールをしていた子供だけだったが(だからそこでやるのは止めろというのに)、コトが済んで戻ろうとしたとき、向こうからあの人がお帰りになった。

「こんにちは」と挨拶だけしてそそくさと引っ込もうと思ったのだが、案の定「あ、ぽ子さん!!」と声を掛けられた。

この一言ですでにダメージ。

苦痛に満ちた数分が予想されるからだ。

彼女はこんぺい党なのだ。

選挙が近くなると家にやってきて、ひと通り「こんぺい党」を宣伝していく。

悪いが全く興味はない。

どうでもいい。

というか苦痛だ。

迷惑だ。

こんなに政治に無関心なのもいけないだろうが、もう何を信じたらいいのかわからないのだ。

あっちでは「あれをやります」、こっちでは「こうします」とがなりたて、「どうだ、凄いだろう、だから1票」という押し付けがましさが鬱陶しい。

だいたい本当にやるのかも分からないし、そう簡単に世の中が良くなるとも思えない。

酷く困ってもいないし、放っておいてもらいたいものだ。

「ゲームの邪魔をしません」という公約でも掲げてくれればちょっとは心が動くかもしれないが。

つまり今の私は「ゲーム時間の捻出を邪魔される」ということが一番迷惑な事であり、こんぺい党員が今その罪を犯そうとしているのだ。

「やっぱり民主を押すの?」彼女はは唐突にそう聞いてきた。

はぁ?

民主ってなんですか?

なんで私が民主を押しているなどと知ったような口を利くのだ?

お陰で「どういう意味ですか?」と聞き返す恥をかかされた。

まぁつまり、民主党は大きな約束事をしようとしているが、その裏はこんな感じであり、結局国民が苦労するのよ、と言うのである。

それが正しいのかどうか私には判断できない。

確かに「なるほど、それもそうだな」と思う部分もあったが、こんぺい党にだって裏はあるんじゃないか?

あぁもう、こういう面倒臭いのは嫌いだ。

どっちだっていい、私を早く開放してくれ。

私は小心者なので、慣れない人の前では基本、ヘラヘラしている。

対等に渡り歩く自信のない者の自衛手段である。

しかしこの方は、私のヘラリリストから外す事にした。

「はぁ。」

「はぁ。」

「そうですね。」

私はヘラヘラしていたが、基本形ではない。

「困惑のヘラヘラ」である。

心持ち眉頭を上げ、目を細め、ジリジリと距離をとっていく。

食いつきが悪い事に気づいたのか、話し足りなそうだったが開放してもらえた。

ホー、これで次の選挙まで逃れられるか。

しかし電話攻撃がもうひとかたいるのだった。

彼女は6年ほど前に辞めた会社の仲間であったが、それ以来全く付き合いはないのに選挙の時になると電話をよこす。

そろそろ来るだろう。

見えない「困惑ヘラヘラ」の効果はいかに。