自死遺児、つまり親を自殺で亡くした子供による文集である。
私自身は自死遺児について偏見など持っていないつもりだったが、これを読んで、自分が思っている以上に彼らは傷ついている事を知った。
このご時勢にそんな事で偏見を持つ人間がいるのかと思っていたが、それがすでに偏見なのである。
彼らの多くは、同じ道をたどる事がわかる。
自分を置いて去ったものへの恨み、自責の念、それに耐えられず「そのこと」については封印してしまうのだ。
この本は、「あしなが育英会」という遺児を援助する集まりを通して出会った自死遺児によって作られた。
一様に心を閉ざしていた彼らは、同じ境遇で同じ思いをしている仲間と出会って、やっと「そのこと」と向き合う事ができるようになる。
固く閉ざされていた心が、大きな悲しみを乗り越えていくさまには感動するものがある。
並大抵な努力では、ここまで来れなかっただろう。
「憎い父」は、「強かった父」として、再び彼らのもとに戻るのである。
この本を出版しようと思ったきっかけは、同じ境遇でまだ苦しんでいる仲間を助けたい、ひとりでも多くの人に「自殺」について理解してもらいたい、という気持ちからであるようだ。
勉強になった。
彼らの強さに拍手を送ると共に、彼らの幸せを祈りたい。
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆
自殺って言えなかった。
自死遺児編集委員会・あしなが育英会編集
サンマーク出版 ¥1365