午前中は大掃除である。
我が家ではない。
実家だ。
10日ほど前に母から「テレビの調子が悪い」と電話があって、久しぶりにダンナと実家に行った。
ダンナはあれこれテレビをいじくり回していたが、私は暇である。
そこでふとテーブルの上のテレビのリモコンを見ると、げぇっ、汚ねえ!!
こってこてのギトギトである。
私は豚骨スープは好きだが、これは勘弁だ。
テーブルの上にはビデオのリモコンもあったが、こちらも同様である。
「マジックリンかなにか、洗剤ない?」と聞くと、「洗剤ねぇ・・・洗剤、洗剤・・・。」
洗剤があるのかどうかも分からないほど、使ってないのか。
「これのことかしら??」と言ってやっと持ってきたのは、変色したマジックリンである。
絶句したがそれしかないというので、そいつでリモコンを磨いてみた。
汚いものが、自分の手で綺麗になるのは、一種の感動である。
そこへ「わぁ、きれいになったね。」などと驚かれたりすると、なお気持ちがいい。
決して嫌いではないのだ、掃除。
しかし「わぁ。」と言われるような見返りがないと、なかなか腰が上がらないものである。
一生懸命やったが、あんまりきれいにならなかった。
洗剤のせいか、時間が足りなかったか、いずれにしろ私はその時決心した。
このケリは必ずつけるぞ、と。
見渡してみれば、汚いところだらけである。実家。
まぁ母ももう80を過ぎた。ギリギリの線でいいのだろう。
もともとあまり掃除が上手い方ではなかった。
そんな訳で今日、大量の洗剤を持って実家に赴いたのだが、結果から言うと完全な敗北である。
私は、どんな汚れにも対応できるように様々な種類の洗剤を用意していったのだが、負けるのだ、余りの汚れに洗剤が。
実家に着くとまずキッチン掃除に着手したが、ギトギトの油はすでにガッチリと固まっており、ビクともしなかった。
玄関も水を流してデッキブラシでこすったりしたが、隅に真っ黒な砂埃がこびりついている。
ぞうきんを絞りに行けば流しの汚れが気になり、流しのためにクレンザーを取りに行くと、電子レンジが気になる。
こんな調子で気になるところを片っ端から同時進行していたら、もう何が何だがわからなくなってきた。
時間は午前の2時間だけ。不可能である。
風呂の掃除道具を持って来るのを忘れていた。
どうせ何もないと思いながらも風呂場近辺を見てみると、そこにはカビキラーがあった。
カビキラー。
母がこんなハイカラなものを自分で買ってくる訳がない。
持ってみると案の定、タップリ入っていた。
これは何年か前に私が、「吹き付けて水で流すだけ。簡単。」と言って置いていったものだ。
この重さ。このホコリ。
子の思い、母知らず、である。
時間一杯、走りながら働いたが、あまり変化はなかった。
昼になったら私は会社に行かなくてはならない。
「アイシャルリターン。」
マッカーサーの有名な言葉をそこに残し、私は実家を後にした。
明日、見てやがれ。
今日は明日のための下準備だったのだッ!!