人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

プレイステーション・ホーム ~初登場~

会社の若き上司アンガが「ぽ子さん、プレイステーション・ホームって知ってます?」と聞いてきたのは、ぽ子の仕事納めの昨日であった。

私はそれを知らなかったが、どうやら無料でできるプレステ版「セカンド・ライフ」的なものらしい。

へ~~っっ!?面白そう、やりたい、やりたい!!

「アバターとか作れますよ。」

「ほんとっ!?じゃあムチャクチャかわいくしてやるぅ♪」

「あ、でも結構リアルな作りだから、多分そうはならないと思いますよ。」

そうっすか。

ほんじゃバーチャルワールドでも顔面チャイニーズのぽ子になるしかないか。

実は私は「セカンド・ライフ」についても良く知っているとは言えない。

バーチャルな世界で擬似生活体験をする、という程度である。

そのバーチャル具合が非常にリアルであるというのをテレビで見たことがあるのだが、それをタダでできるのか。

アバター作るのも楽しみである。

リアルなのか。

傑作のぽ子を作ってやる。

しかし昨夜はダンナとケンカをしてしまったので、ダウンロードから自分でやる事になってしまった。

プレイステーション・ホームを選び、なすがままにダウンロードをしていたら、突然、マンションの1室のような場所に出た。

そしてそこにいたのは、そこにいた人物は、

紛れもなくダンナである。

上司アンガが言ったように結構リアルな作りだったので、一目見てすぐに分かった。

そういえばいつだったか、ダンナがアバターを作っていたような気がする。

そっくりじゃねぇか(泣)

これでバーチャルワールドにデビューである。

部屋の中にはソファが置いてあり、そばに行って確か○ボタンあたりを押すと、「座る」などのコマンドが出る。

とりあえず座ってみたが、それだけである。

ダンナぽ子はしばらくひとり静かに座っていたが、何も起こらないので立ち上がった。

こんな部屋では何も起こらず刺激がない。

部屋を出よう。

広場のような場所に出ると、人がいる。

近づくとその人のIDのようなものが表示されるので、もしかしたら同時にここに出ている人なのかもしれない。

あちこち歩き回っては他人の会話を聞いていたが、突然「こんにちは!」と言われた。

えっ!?私!?

会話を返す手段がわからないこともあるが、それよりもこんなド素人がスムーズに話をできるとは思えないし、だいたい面倒だ。

私はあなたを知らないのだ。

よそよそしい会話を積み重ねていかなくてはならないのは非常に苦痛である。

私は逃げた。

しばらく「こんにちは!」というフキダシがついて来たので心が痛んだが、許してくれ、私は小心者の40女だ。見た目はアキバにいそうな男になっているが。

もうここからはノンストップで走るのみである。

誰にも感心を払われないように。

私はみんなの横を通り過ぎるだけのエキストラで充分だ。

ビルに入る。

店に入ったら、というか、走っていたら入っちゃったのだが、「買い物しますか?」的な展開だ。

ど、どこまでバーチャルなのだ?

うかつに高い買い物なんかして、もしかしてカードの登録なんてしてあったら本当に請求されちゃったりしないのか?

ここもキャンセルですぐに出る。一体私は何が目的でここを走っているのだろう?

しかしどこにいっても人だらけだ。

あぁやめて、来ないで、よけて!!ヒーッ、ここにもいるッ!!

まるでホラーアクションのゲームである。

誰も追いかけて来るわけでもないのに、ひたすら逃げ回っていたが、ふと気がついた。

私のように走っている人が結構いるのである。

もしかしたら、初心者はみんなこのようにただ走っているのでは?

私はそこを走っていたひとりに目をつけ、ちょっと間隔をおいて後についていった。

ひたすらついていく。

しばらくすると彼は突然止まった。

う、どうする?

私もとりあえず、間隔を空けたまま止まる。

しばらくそのままであったが、彼は突然踊り出し、「私」と言った。

「彼」なのに」「私」。

この人も本当はチャイニーズ顔の女性なのに、亭主のアバターを使わざるを得なかったパターンなのか?

「私」

「・・・」

「私」

「・・・」

その繰り返しである。

慣れてないのか、それともこれはゲーム側で用意した、決まり文句しか言わないサクラ的キャラクターか。

「私」

「アバター」

「私」

「アバター」

次はこの繰り返しだ。

どうしよう。

どうしたらいいのかわからなかったが、ハッキリしているのは、慣れてないので関わりたくないという事だ。

ついに、「あなた」「誰?」と来た。

ごめんなさい、私は小心者の40女だ。見た目はアキバにいそうな男になっているが。

このままでは無駄に人を不快な思いにさせるだけになりそうなので、抜ける事にした。

いずれにしろ、ダンナのアバターを使うのには色んな意味で抵抗がある。

自分のアバターが作れるのか。

まずはそこからだ。

後は年が明けて仕事が始まったら、詳しいことをアンガに聞く事にする。

それまではおあずけになるだろう。

しかし正月ハイで飲んだくれて、泥酔状態でやってしまいそうな予感である。