人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

お客人

片付けなくてはっ!!

明日は凄い人がうちに来ることになったのだ。

これまでうちに来た人の中で一番凄い人は、学校の先生である。

明日来るお方は、そんな程度ではない。

もしかしたら私の人生の中でうちに来る人で、一番凄い人になるかもしれないぞ。

猫専門の写真家の、板東寛司さんである。

だから本日の家事は、もう掃除に尽きるのだ。

掃除も掃除、「写真に写ってもいい部屋」にするのだ。

そういえば、チキンクネルに使う生クリームを買いに行かなくちゃならないんだった。

それで思い出した、今日は雨漏りの修理の日じゃん!!

だから買いに行く暇がないんだった。

という事は、雨漏り修理人が来ても恥ずかしくないような部屋にもしなくちゃならないが、修理人と写真家では、片付ける場所が全く違うじゃないか。

うちに来る順では修理人向けの掃除を優先するべきだが、部屋が汚くて写真がボツになるなんて事態は、あってはならない。

部屋が汚くても、雨漏りは直せるのだ。

最優先は写真家である。

私はまず、リビングの掃除から始めた。

大胆に、生活感のあるものをどかしていく。

どこへかと言うと、ダンナの寝室にである。

ガラステーブルの下には通販のカタログとゲーム用のノート、掃除機の先、未使用のお香イチゴ匂など、ゴチャゴチャ置いてあったのだが、全部なくした。

買った時の状態だ。

それをガラスクリーナーで拭いた。

カーテンを洗った。

ソファのハゲかくしにクッションを置いた。

「おはようございます・・・。」

雨漏り修理人が来た。思いがけずイケメン。

しまった、配分を間違えた、後回しにしすぎた。

「ではちょっと見せてもらいます。」

彼が最初に入ったのは、まずぶー子の部屋。

実は雨漏りの修理だけではなかったのだ。

ここはヒビの入った窓ガラス修理の見積もり。

ヒビが入ってから1年近く経っているのが、ぽ子家の証だ。

しかしぶー子の部屋、最強である。

まぁ私の独身時代には遠く及ばないが、女子高生に淡い思いを抱いている人がいれば、奈落の底に突き落とされてしまうような部屋である。

女なんてこんなものだと知るのは、せめて30過ぎてからの方が良いだろう。

次は私の寝室だ。ぶー子部屋の次で良かった。きれいに見える。

ここで雨漏りの場所を探す。

最後はもう片付けかかったリビングでほとんどきれいだったが、ここで私は彼に、「ここからアリがゾロゾロ出てきたんですよ。」と言わねばならなかった。

それから彼は雨漏りの修理を始めたので、私はまた写真家に備え始めたのだが、突然「すみません・・・。」と声を掛けられた。

「トイレ、借りれますか?」

!!トイレ!!

そんな存在は忘れていた。

明日のにゃんこフォトグラファーにばかり気を取られ、今日の修理人がトイレに入る事態になど気持ちが及ばなかった。

どうぞ、と言うより他はなかった。

あぁ、最後に掃除したの、いつだろう・・・。

イケメン・・・。

イケメン対策を犠牲にしただけあって、何とか明日には備えられそうだ。

後は金曜だと言っていつものように飲み過ぎない事だ。

これが一番難しい。