漏斗胸の手術を手がけている先生に会った。
どんなデカい病院の大先生かと思ったら、
非常に気さくな町医者さんであった。
しかし、こういった胸骨の異常のケースをたくさん治して来ただけあって、
前向きで、説得力もあった。
結論から言うと、エルに手術は必要ないとのことだった。
漏斗胸のように中にめりこんでないので、
マッサージで胸骨が膨らむ可能性があると言う。
うちの近所で開業している、以前この先生のもとで働いていた先生に電話をして
このマッサージをやってくれないかと頼んでくれたのだが、
「この子、頑張れば助けられるよ。」と繰り返しているのが聞こえてきた。
頑張って助けて下さい(泣)
結局色々話し合った結果、今移動させるのはエルにとって良くないし、
マッサージ自体は誰にでもできる事らしいので
今の病院でお願いする事にした。
川口の先生に頼まれた近所の先生が、直々に今のかかりつけ医のところに言って話してくれると言う。
夜の面会の時には「エルちゃんのために良いことなら何でもご協力しますよ。」と言ってもらえ、
本当に安心した。
実ちょっと心配だったのだ。
エルの入院も長引いてきてるし、この病院としてはもうできることはないと言われていたのだ。
もしかしてお荷物なのかなぁ・・・と勘ぐっていたのだ。
そして、「今日は朝からあまりご飯食べなくて・・・。」と看護婦さんに言われ、
また頭がクラッとしたが、
「お母さんがあげたら食べるかもしれません・・・。」と言うので、ちょっと気を良くした。
ところで最近の動物病院では、飼い主の事を「お母さん」(お父さんとは言うのだろうか)と呼ぶ。
これが満更じゃない。思わず「ウチの子は・・・。」となる。
外からみれば理解しがたいかもしれないが、ペットではなく家族の一員なのだ。
エスカレートしてちゃんづけで呼ばないように気をつけなくては。
「今度はミルクを混ぜてみました。」そう言って、昨日よりは多く入ったご飯(エサではない)を持って来てくれた。
食べてくれ。命の綱なのだ。
しかしエルは昨日と同じにガツガツペロッと一皿食べた。
これはもっといけるかも、と空のお皿を持っておかわりをもらいに行ったら
そこに居合わせた看護婦さんからどよめきが起こった。
みんな、良かった良かったと喜んでくれ、その後も後ろの方で「嬉しい・・・。」と言っているのが聞こえてきた。
嬉しいのは私じゃ。
もしかしてこの病院ではもう持て余してるのではと、心配していたのだ。
ありがとうありがとうありがとう(泣)
治療方針は決まった。
酸素室からほんの少ししか出れないエルが、どこまでこの治療に耐えられるかが分かれ目になる。
決して楽観はできないが、川口の先生はあっけらかんと言った。
「今はやるしかないよね。ダメだった事ばっかり考えても、この子の為にも何の為にもならないよ。」
不思議な先生だ。
なんだか治る気がしてきた。
多くの人に助けられてここまで来れた。
多くの偶然に救われた。
ここで終わらない。
そんな気がしてきた。