人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

治療法

漏斗胸の手術を手がけている先生に会った。

どんなデカい病院の大先生かと思ったら、

非常に気さくな町医者さんであった。

しかし、こういった胸骨の異常のケースをたくさん治して来ただけあって、

前向きで、説得力もあった。

結論から言うと、エルに手術は必要ないとのことだった。

漏斗胸のように中にめりこんでないので、

マッサージで胸骨が膨らむ可能性があると言う。

うちの近所で開業している、以前この先生のもとで働いていた先生に電話をして

このマッサージをやってくれないかと頼んでくれたのだが、

「この子、頑張れば助けられるよ。」と繰り返しているのが聞こえてきた。

頑張って助けて下さい(泣)

結局色々話し合った結果、今移動させるのはエルにとって良くないし、

マッサージ自体は誰にでもできる事らしいので

今の病院でお願いする事にした。

川口の先生に頼まれた近所の先生が、直々に今のかかりつけ医のところに言って話してくれると言う。

夜の面会の時には「エルちゃんのために良いことなら何でもご協力しますよ。」と言ってもらえ、

本当に安心した。

実ちょっと心配だったのだ。

エルの入院も長引いてきてるし、この病院としてはもうできることはないと言われていたのだ。

もしかしてお荷物なのかなぁ・・・と勘ぐっていたのだ。

そして、「今日は朝からあまりご飯食べなくて・・・。」と看護婦さんに言われ、

また頭がクラッとしたが、

「お母さんがあげたら食べるかもしれません・・・。」と言うので、ちょっと気を良くした。

ところで最近の動物病院では、飼い主の事を「お母さん」(お父さんとは言うのだろうか)と呼ぶ。

これが満更じゃない。思わず「ウチの子は・・・。」となる。

外からみれば理解しがたいかもしれないが、ペットではなく家族の一員なのだ。

エスカレートしてちゃんづけで呼ばないように気をつけなくては。

「今度はミルクを混ぜてみました。」そう言って、昨日よりは多く入ったご飯(エサではない)を持って来てくれた。

食べてくれ。命の綱なのだ。

しかしエルは昨日と同じにガツガツペロッと一皿食べた。

これはもっといけるかも、と空のお皿を持っておかわりをもらいに行ったら

そこに居合わせた看護婦さんからどよめきが起こった。

みんな、良かった良かったと喜んでくれ、その後も後ろの方で「嬉しい・・・。」と言っているのが聞こえてきた。

嬉しいのは私じゃ。

もしかしてこの病院ではもう持て余してるのではと、心配していたのだ。

ありがとうありがとうありがとう(泣)

治療方針は決まった。

酸素室からほんの少ししか出れないエルが、どこまでこの治療に耐えられるかが分かれ目になる。

決して楽観はできないが、川口の先生はあっけらかんと言った。

「今はやるしかないよね。ダメだった事ばっかり考えても、この子の為にも何の為にもならないよ。」

不思議な先生だ。

なんだか治る気がしてきた。

多くの人に助けられてここまで来れた。

多くの偶然に救われた。

ここで終わらない。

そんな気がしてきた。