人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

エルの病気

明日はエルが酸素室から出られれば大学病院へ連れて行く日だ。

その為仕事の休みをとった。

職場のカレンダーを見ると、すでにこの日、パート仲間2人が休みを出していた。

パートは私を入れて5人だ。

私が休むと2人しか残らない。

そして昨日から準社員が風邪で休んでいる。

ついでに言うと、ここは休みのとりやすい職場だが「木曜日を避けてもらえると助かります。」と

たったひとつだけ、休みに関して上司に言われていた。

うーむ、休みにくい・・・。

しかし仕方ないのだ。

大学病院の担当の先生は、週に1度しか来ないのだ。

なので今日、少しでも明日の分を前倒しできればと

朝からのフルタイム+残業で誠意を見せた。これで勘弁してくれ。

結局急ぎの仕事が入った上、今日も準社員が休んだので前倒しにもならなかったが。

7時前まで仕事をして、エルの病院へ直行する。

今日は朝行かれなかった。

エルちゃん、エルちゃん・・・。

今日は休診日なので静かであった。

エルは今日も元気だった。

「やっと希望が見えてきました。」と先生は言った。

え?まだその程度だったの?

「まだダメですか・・・。」

「まだまだ安心できません。とにかくこの調子でやって行くしかないです。」

くー・・・。堅いな。

この先生から「もう大丈夫です。」と言われた暁にはその場で鼻血が出るだろう。

肺炎に関してはもうこのまま良くなっていってくれるんじゃないか・・・。

個人的にはそんな淡い期待をしている。

しかし・・・。

実は他に気になる事があるのだ。

どう見ても胸の骨がおかしい。

ペッチャンコなのだ。

ネットで調べた「漏斗胸」の様子に酷似している。

前足がその横からガニマタ状に出ている。

「先生、前に胸骨に異常があるかもと言われていたんですが・・・。」

感じたままを言ったら、

「そうですね。奇形です。」とあっさり認めた。

あぁ・・・。漏斗胸、4回の手術・・・。

「でも、ハッキリしたことは言えませんが、多分この程度なら呼吸にそれ程影響しないと思いますよ。」

ほんと??

何だか、元気になってきたのになかなか呼吸が安定しなくて

これはやはり重症の漏斗胸かと心配していたのだ。

しかし私の心配はこれだけではない。

「目が・・・見えてないって事ないですか?」

どうも視覚の反応が薄いのだ。つーか、反応がない。

「・・・目、ですね。」バレたか、という感じか。

「まだまだ子猫ちゃんなので分かりませんから。様子を見ましょう。」

そう言った。

あぁ先生、そのリアクションは先生も案じていたんですね・・・。

まだまだ心配はある。

首がブルブルブルブル震えているのだ。

前に他の先生に聞いた時は「子猫ちゃんですからね。ピッとしてる子猫ちゃんなんて怖いですよ(笑)」と言われたが、

いつまで経っても良くならない。

他の病院では「ちょっと首が気になりますね。」と言われた。

先生は「う~ん、まだ小さいから緊張したりして震えちゃうんじゃないかな?」と明るく言った。

「震えてるの、首だけなんですけど・・・。」と言うと

「??首だけ??」と、ちょっと意外そうな顔をした。やめてよ、そのリアクション・・・(泣)

「あの、首が震える病気ってあるんですか?」思い切って聞いてみる。怯んでいる今がチャンスだ。

「う~ん、なくはないけど・・・脳の病気とか・・・。」

脳??NO!!

でも「そんなはずはない」という顔をしていたので、深く追求するのはやめた。

あぁ・・・。

また新たな心配のネタができてしまった。

肺炎だってまだ「やっと光がみえてきた」、「まだまだ安心できません」なのに・・・。

帰り道、私は色々考えた。

考えたって私は医者じゃないから答えなど出ないのだが、

何か他に変わったことはなかったか、症状はどんなだったか。

後でネットで調べるのだ。

しかし私は凄い。

何が凄いって、凄いマイナス思考なのだ。

考えはどんどん悪いほうへ展開していく。

そういえば・・・、音も良く聞こえていないようだった。

自分からのアピールは元気にするが、視覚にしろ聴覚にしろ、

こちらに対する反応が薄いのだ。

いつからだ?

目は「見えなくなるかも」と言われていたから、気をつけていた。

でも確か、家にいた時は割と反応していて

「もしかしたら見えてるかもね。」と言っていたのだ。

音に対してもそうで、「声とかに反応するよね。」などと言っていたのだ。

確かではないが、家にいた時はまだ反応があった気がする。

それが何かが原因でダメになる??

脳の病気・・・?

それとも肺炎の熱とかで脳の神経がやられたとか??

一目散に家に帰り、パソコンに向かう。

繋がらねえ。

そうだった、試験中の娘ぶー子がいじれないように、コードを1ヶ所はずしたのだ。

くそー、ぶー子がいると戻せないじゃないか。

部屋に戻ったのを見届けてから、屈んでコードを戻す・・・あれ?

コードが外れているのが見えないように、外したコードの先っちょは隠してあったのに、

ベロンとこんにちはしている。

野郎・・・。

履歴を見ると、しっかりぶー子が使った跡があった。

だんだん知恵がついてきやがる。

そこからは検索地獄だ。

私は、症状から病名をつけないと気が済まない上に、このマイナス思考だ。

どんどん重病になっていく。

これは自分自身についてもそうで、「家庭の医学」という厚さ15cmはあろう本は、

私のバイブルだ。

これによって私は何度もガンになったし、極めて稀な病気にもなった。

実際に病院へ行って症状を訴え、挙句、小型の24時間心電図を測る機械を体につけたこともある。

ネット検索の結果、エルは「先天性小脳形成不全」か「水頭症」が疑われる。

あくまでもマイナス思考の私の見解だが。

しかもまだ、1時間半かけて検索したが途中である。

どうしよう、どうしよう、と泡食っていたらダンナが帰ってきた。

晩ご飯の支度をしなくては。

ハッ!!

ビール冷やすの忘れてた!!

「ごめん、ビール冷やすの忘れた・・・。」

「言ってくれたら買ってきたのに!」

「今気がついて・・・。」

ひえっ、かなり露骨にイヤな顔をしている。

「焼酎は買ってきてくれた?」

・・・忘れてました。

しかしここでプツンと来てしまった。

朝から最低限の家事をやって仕事行って残業して病院行って心配になってずっとパソコンに向かっていたのだ。

晩ご飯だって作れないと思ったから、せめてちょっとはマシなものをと思って3軒もスーパー、ハシゴしたんだぞっ。

この場合、ここでキレた私が悪いことになるのだが

短気結構、悪妻上等、ノーモアこれ以上の負担だ。

ところでキレたと言っても、何か言ったわけではない。

何も言わないのだ。

気まずいまま時間が過ぎている。