人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子57歳。

ハードルをどかす

「なかなか話す機会がなかったんだけど・・・。」

ビールを飲み、ワインに入り、軽く酔って気持ちのいいところであった。ダンナが改まって切り出したので、私はちょっとドキッとする。

「前にも話したことあると思うけど、会社にバンドやってる奴がいて。」うん。覚えてる。

「一曲一緒にやらないか、って言われてさ。」

バンド単位のライブではなく、セッションで1曲エントリーということらしい。他のメンバーも、やはり社内の人だと言う。

「え!じゃあ練習しなきゃじゃん!」

私は嬉しかった。

 

もうバンド活動をしなくなって、何年経つだろう。

私は細々とひとりでピアノを弾いているが、ダンナはもう全くギターを弾いていない。

遺影はギターと写ってるものにしてくれ、とまで言っていたのに、そんな遺影は今となっては嘘である。

あんなに弾いていたのにもったいない、という気持ちと、休日になってもスマホをいじるばかりでやはりもったいない、という気持ちと。

時々こちらから「弾いて」と頼むと、それはそれはそれで「やっぱり楽しいなw」などと言うので、好きな気持ちは変わっていないんだと思う。

最初のハードルだ。手にするだけなのに、何となく億劫、今ではない、いつでも弾ける、そんな感じで遠ざけ、ますますハードルが上がってしまったのだろう。

ライブなら、練習しなくちゃである。ハードルをどかさなくちゃなのである。

私は壁にかかっているギターを、ダンナに手渡した。

 

曲は、80年代の伝説的ロックバンドのシングルだった。

曲を流しながら、コード譜を追う。YouTubeでギターパートの解説を聞く。私も昔、ベースを練習した曲だ。一緒に弾く。

「やっぱギター、楽しいなぁ!」

それよ、それ!その感じを忘れて欲しくない。

「言う通りに書いて。」私は筆ペンと白い紙を渡した。

「俺はこれから毎日、ギターを3分弾きます。少なくとも1分は弾きます。令和8年5月24日。」

手にしてしまえば、まさか3分では終わらないだろう。手にしてくれさえすればいいのだ。そして、日々の積み重ねは貯金となり、みすみす無くしたくはなくなるだろう。あわよくば、増やしたいという気持ちになれるかもしれない。

 

とりあえず、昨日は弾いたみたいだ。

ライブは7月。

頑張れ。それ以降も(笑)