人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

未必の殺意

昨日「もうどうてもいいよ・・・期」にいるという話をしたばかりだが、今日は何をトチ狂ったか輝いてしまったぽ子である。

休日だがこれまで気になりながらも放置していた諸々の事にカタをつけ、堂々「頑張るぞ~~!!期」である。

勝因は何か?

昨日も夜更かしし、どうせ二度寝だぜ、と自嘲気味に起きたのだ。

前回の「頑張るぞ~~!!期」が終った原因に手帳が関係ありそうだと気付いた事が良かったのかもしれない。

起きるなり「手帳、手帳。」と思いつき、ダンナが会社に行くと手帳を引っ張り出してきて私はしばらく考えた。

こいつさえ活用できれば、私は再び「頑張るぞ~~!!期」に戻る事ができるのだ。

私は目覚しにコーヒーを飲んだ。

アイデアが出ない間は領収書を整理し、テーブル周りを片付けた。

昼にはラーメンの誘惑に負けることなくサンマを食べ、その後はパソコンで調べものをした。

順調である。

さて、領収書整理の仕上げだ、とテーブルにつき、「ここも近いうちに片付けなくちゃ。」とガラステーブルについた引き出しを開けると、中に万華鏡が入っていた。

軽い気持ちでちょっと覗いてみたのだが、これが止められなくなってしまった。

二度と同じ模様は現れない、美の奇跡である。

別に見栄を張るわけではないが、昔のサラサラしたぶっとい万華鏡ではない。

水の中にラメの入ったやつだ。

私は飽く事なく見入っていた。

ラメは時に早く、時にゆっくり流れ、色合いを変えていく。

どれほどの時が流れただろうか。

寝ていた。

無駄な時間であった。

これならゲームの方が脳みそ使ってるだけマシである。

万華鏡などゲーム未満なのだ。

これは人間を駄目にする。

覗き込むだけで私たちを魅了し、眠らせる。

恐ろしい武器でもある。

アメリカ軍がすっごい万華鏡を開発しているかもしれない。

しかしセールスマンに起こされ目が覚めたのをきっかけに、また活動することにした。

目覚しに筋子を食べ、ところでこの筋子はハズレであった。

ツブが小さくて薄味の筋子はいただけない。

血管ブッ千切れるほどしょっぱいのがいいのだ。

で、ハズレの筋子を食べたらアイロンがけだ。

電源を入れ、温まるまで猫のトイレ掃除だ。

しかし現在、我が家の猫トイレは10個だ。

あちこち動き回る事になるが、そのためには何度かアイロンのコードをまたがなくてはならない。

コードが短いのでかなり高い位置にゴム飛びの如く張られ、おっと、この表現に時代を感じてしまうが、これをまたぐには結構足をあげなくてはならないのだ。

しかしこれまで引っ掛けた事は一度もない。

引っ掛けないように注意していたからだが、その実績がまた次も面倒だからまたいでしまえ、となる。

そしてそれはいつか引っ掛ける事態に繋がるのだ。

それが今日だ。

何かヤバい気がしたのだ。

今日に限って「いつか引っ掛けるんじゃないか。」「もうアイロンのコードをまたぐような生活は、今回限りにしよう。」などと頭をかすめた。

引っ掛かる寸前に「あ!」と思ったが、後はなし崩しだ。

その時の気持ちをスローモーションにすると見えてくるものがある。

「い つ か 引 っ 掛 け る ん じ ゃ な い か。」

「・・・・・・・・・・。」

「も う ア イ ロ ン の コ ー ド を ま た ぐ よ う な 生 活 は 、 今 回 限 り に し よ う 。」

「・・・・・・・・・・。」

「あ !」

「・・・・・・・・・・。」

「ま、いっか。」

もう間に合わない、というものあったが、「え~い、行っちまえ。」という気持ちがなかったと言えば嘘になる。

何とかなると思ったのだ。

何とかなるとはどういう意味だと今つっこみたいが、もちろん何ともならなかった。

ガゴン!!と大きな音を立ててアイロンはテーブルから落下した。

その時カランと乾いた音がし、何かが飛んだ。

スチームのためには水をアイロン本体に入れるが、そのフタが取れたのだ。

床は水浸しである。

これは思った以上の大惨事となった。

そういえばこの前に使っていたアイロンは同じように娘ぶー子が壊したが、その時ダンナは「アイロンが壊れたこと」と「床がへこんだこと」のダブルの惨事に本気で怒っていた。

私は新しいコードレスのアイロンが欲しかったので満更でもなかったのだが、今度は私が怒られるのか。

しかし取れたフタを然るべき場所に押し込んだら、パチンと音がして元に戻った。

黙っていればわからないという事で、めでたく惨事は幕を閉じたのだった。

殺人事件の裁判などで、「殺す気はなかったが、もしかしたら死ぬかもしれないという事はわかっていた」という時に「未必の殺意」などと言うが、これもそれに当てはまるのかもしれない。

最後にゲームで締めくくろうと思ったのだが、やってみたらボス戦で長引いてしまい、1時間もやっていた。

まぁ良くあることだ。

いつどこでセーブできるかなんて、初めてやるゲームではわからないのだ。

想定の範囲内だ。

しかしこれを「不可抗力」と言ってしまう。

「未必の悪意」である。