「今日は一緒にお風呂に入ろう♪」
家に着くなり娘ぶー子が言った。
どうしたと言うのだ?
彼女はもう高校生なのだ。
母親と一緒に風呂に入るという事が魅力になる年齢でもない。
「いひひひひ~♪」そこでぶー子はバーンとこれを出した。
入浴剤だ。
パチパチはじけるだとか
脂肪メラメラだとか、
これはかなりエキサイティングな入浴タイムになりそうだ。
「よっし、いくぞ~~!!」
お互いに「アンタが遅い」と相手を煽りながら、風呂場を目指す。
この入浴剤の効果を、できるだけ有効に余すところなく楽しむために
湯船に入る前に体も顔も頭も洗い、2人同時に入る事にした。
ところが我が家の風呂は普通の風呂だ。
2人も同時に体を洗えば、当然どちらかにしわ寄せがいく。
ぶー子は私の後ろで立ったまま体も頭も洗い、1個しかないシャワーも大人しく待っていた。
・・・なんて・・・いい子なのでしょう。こんな時ばかり。
ぶー子と一緒に何かやって、こんなに滞りなく進行するなんて珍しい事だ。
しかしあまりに滞りなく進行したので、私の方が先に洗い終わってしまった。
だから湯船に入ろうとしたのだが、「まだ待って!!同時に入るのっ!!」とあくまでこだわるぶー子。
このこだわりを勉学に生かしてもらいたい母親ぽ子であった。
さて、いよいよ爆汗の時だ。
ぶー子は子供のようにニコニコしている。
私は袋の口を切って中身を湯船にサラサラと落として行った。
赤いツブだ。
すぐに溶け込んでいった。その中にバスソルトのような半透明のツブが混ざっていて、どうやらそれが解けるとパチパチ音が鳴るようだ。
パチパチという音を聞きながら体中撫で回す。
とろみ成分が入っているらしく、肩など触ると納豆のように糸を引く。
「すげぇ~。すげぇ~~。」とぶー子は大喜び。
ところが私はこの後の事を考えていた。
もうすぐダンナが帰ってくるだろう。
「滑りやすくなるので注意」と書いてあった。
彼はこの、パチパチも全て鳴り終り、ただ滑りやすくなっただけのカス風呂に1人で入るのだ。
・・・と言う様なことを笑いながらぶー子に言ったら
「お母さん・・・。この入浴剤がパチパチなる事はお父さんに黙っててあげて。」と真顔でいうので爆笑してしまった。
いつも5分で風呂を済ます自分だったので、もう茹で上がりそうだ。
私は出たが、ぶー子は袋に書いてあった通りにその後も出たり入ったりしていた。
本当に痩せると思っているのだ。
ところでこれは昨日の話だが、「この風呂、今日はどうするかねぇ。」とぶー子に聞くと
「まだまだ入る。」と言ったので
今夜も皆、ねばっこい風呂に入った。
ねばっこいし色も付いてるし、こりゃ当分洗わなくても良さそうだな。