私がその便意を感じたのは、金曜日の事だった。何日ぶりかなどと考えたのは、思えば便意などというものは久しぶりだったからなのかもしれない。私は最後に出した時のことを思い返していた。
月曜日だ。
それから結構経っているが、そこではない。月曜日と言えば、健診だったのだ。つまり、バリウムを飲んだ日。
飲んだバリウムは・・・、出したよね!?下剤はすぐに飲んだ。トイレにも行った。しかし何だこの不安は。ちゃんと出し切ったか。
私には、自分が排泄したものを確認するなどという習慣はない。そんなもの、できれば見たくないものだ。しかしここは、確認すべき場面であった。油断した。出た=完了ではない可能性がある。
もしバリウムが体内に残っていたとしたら・・・。4日か。ヤバそうだな。とにかく便意があるなら、早く出そう。
出なかった。
便意はあるのに、びくともしないのである。あぁこれが便秘ってやつか。縁がないので知らなかったが、便秘が辛いとは、こういう状態のことだったのか。
一度部屋に戻り、作戦を練ることにする。
まず、4日もバリウムが体内に残っていた場合、バリウムが水分を吸収していくために、便はどんどん硬くなるという。どうにも動かない場合は、病院だ。浣腸などの段階を経て、最悪、便を崩して出すことになるらしい。どうやるかは分からないが、そんなのはまっぴらごめんだ。大概のことはブログのネタになるので歓迎するが、そんなのは絶対に御免こうむりたい。
では、頑固な便秘にはどう対処するか。
ウォシュレット浣腸。これは日常的にやっている。こんなレベルではどうにもならない状況だ。
下剤。健診でもらった残りを飲んだ。
浣腸。薬局で買うことになる。覚悟は決めたが、下剤の効果を見てからにしたい。
ということで、下剤の効果待ちだ。待っている間にも、便意は常に付きまとっている。
何なんだ、便意とは。イライラするようなワクワクするような、いても立ってもいられない感じ。なので何度もトイレには行くのだが、本当に、ビクともしない。バリウムか。やはりバリウムだったのか。4日目のバリウム。
ムウウウウウウ~~~~~~~ッと腹圧をかける。こめかみの血管がはちきれそうだ。
何となく便が5ミリほど下がるような感じはあるのだが、どうにも出口とのサイズが嚙み合ってないようで、そこで食い止められている。
これ、出たら出たで出口がやばいんでないの?できれば小出し希望(泣)そんな要望が聞き入れられるとは思えない危機である。
下腹が、ゴロゴロと鳴り出した。出せと要求しているのだ。しかし出口はそれを拒んでいる。
上からのプレッシャー、下からの突き上げ。中間管理職か。笑えん。これはもう、病院行きか切れ痔の二択のような気がする。
トイレに駆け込む。あぁここまでは普通の便意なのに、尻、頑張れよ。
一気に出そうとするから危険なのだ。出口に柔軟性を持たせよう。いきなりハードな運動をすれば壊れてしまう。少しずつ、少しずつ。
少しずつとは一体、だが、腹圧と弛緩を繰り返しているうちに、やがてコロンと小さな塊が転がり出て来たのだ。
おお、レベル1、クリア。焦るな、その調子。
コロン。
なんて可愛らしい、頼りない音なのでしょう。ボスはまだまだ先だ。こんなものではない。
ドスン!!
重量感のある音だった。今度はちゃんと確認した。それは白く、「便」などという響きとは遠い芸術作品のようであった。
後はもう、消化試合だ。
腹痛は夜まで続き、腸の中身はあらかた出てしまったようである。体重までごっそり減っていた。
バリウムを飲んだ後は、全部出し切ったことを確認すること。
今回は事なきを得たが、それでも精神的、肉体的にかなり消耗した。もうこんな思いはしたくない。
教訓。
バリウムが残るぐらいなら、下剤を飲み過ぎておけ!!
あと、ちゃんと目視確認しようね。