いや~~、島崎藤村なぞ初めて読んだが、まず読みにくいことこの上なかった(笑)
明治時代の作家らしいが、長い時を経たため文章が古すぎて理解しづらいのである。
序盤で挫折しそうになったが、読んでいくとこの古い文章に特徴と言うか、傾向のようなものが見えて来たので、そこがつかめてしまえばグッと読みやすくなったのだ。
「我は穢多なり。」
士農工商穢多非人。の「えた」だ。
階級の最下層の穢多として生まれた丑松。
父の努力でその身分は明かされぬまま学校の教師となり、長野は飯山の学校で立派に教鞭をとっていた。
ある日、同じ下宿に住む男が穢多であることが知れ、散々に罵られて追い出される場面を目にしてしまう。
自分もばれたら、同じ目に合うのだ。
いたたまれなくなり、下宿を変える丑松。
そんな丑松の尊敬する人物は、やはり穢多でありながら世の中で活躍している猪子蓮太郎であった。
猪子は穢多であることから迫害されてきたが、それをバネにここまで這い上がって来た男である。穢多であることを隠さず、社会の在り方を非難する。
そんな猪子と何度も話をするうちに、自分も同じ身分であることを伝えたくなってくる丑松。
「絶対に、穢多であることは人に話してはならない。」
丑松の父はこれまで、何度も何度も丑松にそういって来た。丑松を守るために自分は山奥に隠れるように暮らしていた。そんな父の、強い願いであり教えであった。
気持は揺れながら、身分を隠すことに日々息苦しさが増してくる。
しかしその秘密は、思わぬところから漏れていくのであった・・・。
読みにくさはあれど、丑松の追いつめられていく心境が良く伝わって来る。
あいつは何かに感づいただろうか、またあいつは何か知ってるんじゃないかと、疑心暗鬼に陥っていくそのさまは、ドストエフスキーの「罪と罰」の主人公を思い出させた。
猪子に、自分も穢多であることを告白しようとする場面では、ドキドキしてページをめくる手がワナワナしてしまった(笑)
なかなかドラマティックな話だったが、オチがあまりにもまとまり過ぎていてちょっと残念であった。
悲痛な中に救いがある、ぐらいな感じの方が自然に感じる。
後味は悪くなかったけど。
ぽ子のオススメ度 ★★★☆☆
「破戒」島崎藤村
新潮文庫