「ファイナルファンタジー」、「オンラインゲーム」などというと敬遠してしまうかもしれないが、誰でも分かるように書いてあるし、そこにあまり気にせず読んでもらいたい本だ。
父親が胃癌になり手術を受け、お見舞いに行った「僕」。
成長するにつれ接点がなくなり、「お父さん」と呼ぶのも気恥ずかしく、すっかり距離ができてしまっていた。
思えばほとんど言葉を交わすこともなく、こんな事態になってふと思った。
「僕はこの人が死んだ時、泣くのだろうか?」
これではあまりにも寂しすぎる。
かと言って今さら急に仲良くなどできない。
そこで思いついたのが、「光のお父さん作戦」であった。
「僕」は、オンラインゲームをやっていた。
そして多趣味の父も、齢60にしてゲーマーであった。
この父をオンラインゲーム上に連れ出し、僕が助けていこうじゃないか。
その際、自分の正体は隠す。あくまでもそこで偶然知り合った体だ。
オンラインゲームはひとりでプレイするオフラインのゲームと違い、ゲーム上で他人と出会うことができる。
そしてそこで出会った仲間と力を合わせて敵を倒していくことが、オンラインの特徴であり醍醐味だ。
強い敵を苦労して倒した時ほど、達成感は大きい。そしてその大きな達成感を仲間と共有できる。
「僕」は父親と、それを共有しようと考えたのだ。
息子としてだと言えないようなことも、ゲーム仲間だと言えそうな気がする。
そうして距離が縮まり、仲間として絆ができた時に、自分が誰であるかを明かすことにしよう。
「僕」は早速「ファイナルファンタジー14」のソフトを遅ればせながらの誕生日プレゼントとして父親に渡し、キャラクターを作るところまで目の前でやってあげた。
父のキャラクター名は「インディ」。
翌日「僕」は仕事から帰るとゲームにログインし、「インディ」を探す。
そして父と子の、新しい交流が始まる・・・。
後で知ったが、これはもともとはブログだったようだ。
それが好評で、ドラマ化、書籍化となったらしい。
なので小説とはちょっと趣が違い、画像(スクリーンショット)が多く、行間も広くとってあり、マンガチックでサクサク読めてしまった。
単に読みやすいだけでなく、面白かったからどんどん読んでしまったこともある。
いくらゲーマーとはいえ、お父さんは60歳のオンライン初心者だ。
必死であったり勘違いがあったり、傍から見ていて微笑ましい。
そしてそれを見守る「僕」。
必要以上には手を貸さず、まるで「父親」のように父を戦士として育てていく。
笑いどころ満載、しかししっかり「父子」の絆について描かれているので読み応えもあった。
面白かったEE:AEACD
ブログの方を見たら、本には載っていない話もあり、こういうのもひっくるめて1冊にしてくれたらもうちょっと長く楽しめたのにと思うと残念だ。
これから、ブログを追おう。
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆
「光のお父さん」 マイディー
講談社