人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

光のお父さん / マイディー

「ファイナルファンタジー」、「オンラインゲーム」などというと敬遠してしまうかもしれないが、誰でも分かるように書いてあるし、そこにあまり気にせず読んでもらいたい本だ。

 

父親が胃癌になり手術を受け、お見舞いに行った「僕」。

成長するにつれ接点がなくなり、「お父さん」と呼ぶのも気恥ずかしく、すっかり距離ができてしまっていた。

思えばほとんど言葉を交わすこともなく、こんな事態になってふと思った。

「僕はこの人が死んだ時、泣くのだろうか?」

 

これではあまりにも寂しすぎる。

かと言って今さら急に仲良くなどできない。

そこで思いついたのが、「光のお父さん作戦」であった。

 

「僕」は、オンラインゲームをやっていた。

そして多趣味の父も、齢60にしてゲーマーであった。

この父をオンラインゲーム上に連れ出し、僕が助けていこうじゃないか。

その際、自分の正体は隠す。あくまでもそこで偶然知り合った体だ。

 

オンラインゲームはひとりでプレイするオフラインのゲームと違い、ゲーム上で他人と出会うことができる。

そしてそこで出会った仲間と力を合わせて敵を倒していくことが、オンラインの特徴であり醍醐味だ。

強い敵を苦労して倒した時ほど、達成感は大きい。そしてその大きな達成感を仲間と共有できる。

「僕」は父親と、それを共有しようと考えたのだ。

息子としてだと言えないようなことも、ゲーム仲間だと言えそうな気がする。

そうして距離が縮まり、仲間として絆ができた時に、自分が誰であるかを明かすことにしよう。

 

「僕」は早速「ファイナルファンタジー14」のソフトを遅ればせながらの誕生日プレゼントとして父親に渡し、キャラクターを作るところまで目の前でやってあげた。

父のキャラクター名は「インディ」。

翌日「僕」は仕事から帰るとゲームにログインし、「インディ」を探す。

 

そして父と子の、新しい交流が始まる・・・。

 

 

後で知ったが、これはもともとはブログだったようだ。

それが好評で、ドラマ化、書籍化となったらしい。

なので小説とはちょっと趣が違い、画像(スクリーンショット)が多く、行間も広くとってあり、マンガチックでサクサク読めてしまった。

単に読みやすいだけでなく、面白かったからどんどん読んでしまったこともある。

 

いくらゲーマーとはいえ、お父さんは60歳のオンライン初心者だ。

必死であったり勘違いがあったり、傍から見ていて微笑ましい。

そしてそれを見守る「僕」。

必要以上には手を貸さず、まるで「父親」のように父を戦士として育てていく。

笑いどころ満載、しかししっかり「父子」の絆について描かれているので読み応えもあった。

 

面白かったEE:AEACD

ブログの方を見たら、本には載っていない話もあり、こういうのもひっくるめて1冊にしてくれたらもうちょっと長く楽しめたのにと思うと残念だ。

 

これから、ブログを追おう。

 

 

ぽ子のオススメ度 ★★★★☆

「光のお父さん」 マイディー

講談社