人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

本日の降伏

「お得意さん回り」をきっちりスケジュール化したので、ネット中毒からは脱出できそうである。

しかしテレテレしてると眠くなってしまうのだ、一日のスケジュールはきつめに組んでいる。

これに挑むようにこなしていくのである。

所詮家事レベルだが、これはこれで結構忙しく、それを楽しんでいる毎日だ。月曜日を除く。

しかし大概、どこかに行かなくてはならなくなるなどの何らかのイレギュラーが起こり、スケジュール通りにはなかなか運ばないものである。

消化不良のまま、できなかったことは翌日に持ち越すが、やることがなくなる日など永久に来ない気がする。

イレギュラーへの対処。ここが重要だ。

私はここが下手なのである。

そもそも予定をタイトに組んであるので、時間が経つほどに追いつかなくなってくるのだ。

なにくそ、次のアイロンがけを早く終わらせれば、高速で動けば、などと調整を図るが、やがて敗戦の色が濃くなってくる。

アイアムジャパニーズ、ネバーサレンダーね。自分の立てた予定に負けるなど、あってはならないのである。午後4時あたりが、肉体的にも精神的にも追い詰められている時間帯だ。

その時間帯、今日は家計簿をつけていた。

そんなものつけているのかと驚かれそうだが、大層なものではない。レシートをジャンル別に貼って、それぞれの合計を出すだけだ。

一度はもう面倒になってダンナに管理を全て任せたのだが、人の金は使いづらいものである。「なくなったからくれ」というのが非常に辛いので、「どうしてなくなったのか」をはっきりさせることにしたのだ。

10日ごとに清算するようにしたので、かなり楽にはなった。

以前、ひと月ごとに清算していたときは、食費の計算が壮絶で、分厚いレシートを何度もめくりながら、毎度違う合計にウンザリしたものである。

今日これが終わった時点で、1時間の遅れが出ていた。

まぁ我が家のハウスワインを決めたり、アルトの音域を調べたりするのなんかは、急ぐ用事でもない。そこを削れば辻褄も合うだろう。

計算機やレシートをしまうと、エルがいないことに気づく。

ソファの上に置いてあるダンボールの中で、彼女は寝ていた。

萌えっ。←最近この言葉も聞かなくなったな。今はこういう時、何と言うのだろうか。

「えーうーEE:AEAA6

ダンボールの隣に座り、中を覗き込んで声をかける。

エルはチラリとこちらを見ただけで、起きる気配はない。

その代わりに、大きい黒いのがすっ飛んできたのだ。

呼んでませんが・・・。

大五郎はまるで気を引くように、すぐ隣のキャットタワーの柱でバリンバリンと爪を研ぐ。

甘え下手な子である。

どれどれ、と背中を撫でるが、止めてくれ、とすり抜け、私の膝に乗った。

おやEE:AEACA珍しいね。抱っこも膝も愛撫も嫌いなやんちゃ坊主が、拗ねたガキ大将のように何かを要求している。

しかしどうしたらいいものか。撫でると嫌がるし、大五郎はそういった類のコミュニケーション能力が著しく低いのだ。彼の「そ・こEE:AE595」が分からない。

お尻をポンポン叩いてみた。これは嫌いじゃないことは分かっている。

しかしシビアに「程度」があるようで、突然ガブッと噛まれることが多い。今回もそのパターンであった。

すかさず首の周りを掻いてやる。目を閉じる。しかしこれにも「程度」があり、有効期間はどれも短命だ。ガブリ。

次は頭を掻く。じっとしている。当たらずとも遠からずか。やがてガブリ。

背中を撫でる。間髪入れずにガブリ。

尽きた。

これ以上繰り返せば膝から下りてしまうだけではなく、「ここは使えない」の烙印も押されてしまう。何とかこのお客様に、快適な環境を提供することはできないものか。

考えあぐねて身動きできないでいると、大五郎は勝手に丸くなって目を閉じた。

そうかっ。放っておいて欲しかったのだ、ダイは。かあちゃんの膝さえあれば、十分だったのである。

愛いやつめ。

望み通り、放っておいてやるぞ。

かくして1時間だ。次がいつかも分からないのだ、どうしても起こすことができなかった。

しかしその1時間、大五郎は全く動かず、意を決して大きな声で呼びかけても、ピクリとも動かなかったのだ。

私が寝てしまう危険も迫っていたので、そっとソファの上に移動させた。

午後5時から6時は、降伏宣言の時間帯である。

今日もダメだった。すっかりやる気もしぼむ。

私はイレギュラーへの対処が、下手なのである。