なんとも女性らしいタイトル。
恋愛ものや女性ターゲットのフワフワしたものは好んで読まないのだが、魔が差した。
あらすじに、「夫婦の意味」という言葉があったのが気になったのである。
結婚して20数年。
子供が大きくなり、自分たちの事を考える時間が増えるにつれて、私も良く考えるようになった。
士郎と結子は、子供のいない結婚7年目の夫婦である。
互いに仕事を持ち、いい距離を保ちながらいい関係を築いてきたと思っていたが、ある時、階上の部屋が火事になり、突然帰る家を失ってしまう。
リフォームは保障されたので期限付きではあったが、そこでふたりが選んだのは不思議と「別居」である。
これまでの生活に何の不満もなかったが、離れてみたら、お互いにその自由さ、気楽さにすっかり居心地良くなってしまう。
不倫じみた恋愛ごっこも絡み、こうなると今さらもとの家庭に戻る意味は何なのか、という疑問が湧いてくる。
士郎と結子の決断は・・・?
最初は「好きだから一緒にいたい」などという甘い理由で結婚、同居をしても、時間が経てば、恋愛感情というものは必ず形を変える。
生活と恋愛は、同時進行できないものなのだろう。
では、どう変わっていくのか。
この本にもあるように、「家族」ともまた違うのだ。そこが厄介なところである。
ありのままそのままを受け入れてくれるのが家族なら、ありのままそのままにならないような工夫が必要なのが夫婦なのではなかろうか。
その何とも曖昧な部分が、「夫婦の意味」をも曖昧にする。
この士郎と結子のパターンは、極端ではあるが、そんな夫婦が自由を手に入れてしまったらどうなるか、というのを非常に良く描いていると思う。
昼メロのノリかと思いきや、後半はミステリーでも読むようにグイグイ読まされた(笑)
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆(女性向け)
「100万回の言い訳」 唯川 恵
新潮社文庫